第115話

  四

 操舵室で時姫は、三人が搬出されていく様子を受像機モニターで見つめていた。

 検非違使たちがしっかりと時太郎たちを抱え、外へ出るのを確認すると、時姫は面を上げ、決意の表情を新たに、命令を下した。

重力制御装置グラビトロン・コントロール始動! 外部出入エア・ロックり口遮断! これより〈御舟〉は大気圏外へ上昇する!」

 時姫の命令に、操舵室は活気付いた。控えている検非違使が各々の持ち場につき、忙しく装置を操作する。

 受像機で台に尻餅をついたままの甚左衛門が「へっ」と笑った。

「いったい、何事が起きているんだ? なぜ、あの三人は眠っちまったんだ?」

 受像機に目をやり、時姫は音声装置に話しかけた。

「甚左衛門、妾の声は聞こえていよう。その部屋に睡眠瓦斯トランキライザーを流したのです。本来は暴徒鎮圧のためですが、時太郎を守るために使いました。その台には力場が張られているから、瓦斯はそちには影響しません。そして、この〈御舟〉は今から宇宙へと旅立ちます」

 甚左衛門は目を丸くした。

「星の世界へ行くのか? 今から?」

 時姫は頷いた。

「そうです。そなたは妾の道連れとなって同行するのです」

 ひゃっ、ひゃっ、ひゃっと甚左衛門は、奇妙な笑い声を上げた。

「そりゃ豪気だ! おれも星の世界へ旅をしたかったんだ!」

 音声接続装置のスイッチを切り、時姫は受像機から顔を背け呟いた。

「そう……この世の果てへの旅に!」

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