第81話

  四

 刑部狸とおみつ御前は組み合っている。

 だが前の試合で体力スタミナを消耗したのか、息を荒げるだけで中々動こうとはしない。

 ふーっ、ふーっという息だけが聞こえている。

 お花は眉を寄せた。

「なんか、変……」

 もぞもぞと刑部狸が身じろぎをした。

「あらっ!」と、お花が顔を真っ赤に染めた。慌てて時太郎に近寄ると、その目を両手で塞ぐ。

「おいっ、何をするんだ!」

「あんたは見ちゃ駄目!」

 お花が叫ぶ。

 時太郎はお花の手を振り払った。

「なんだよう……」

「だって……」

 お花は俯いた。

 再び試合に視線を向けた時太郎は、驚きの余り目を見開いていた。

 刑部狸の両目は充血し、食い縛った口許からは、涎がたらたらと溢れていた。

「けええええっ!」

 刑部狸が奇妙な叫び声を上げる。

「ひょおおおおっ!」

 おみつ御前もまた、叫んだ。

「ふぐうっ!」

 二匹は強く、お互いの身体を抱きしめあう。ずりっ、ずりっと二つの体が擦りあい、熱気で湯気が上がった。

 そのまま、どて、と横倒しに地面に転がる。ごろごろと抱き合いながら転がると、刑部狸が上になり、腹這いになったおみつ御前に背後から圧し掛かった。

「ふんっ!」

 刑部狸は低く唸ると、ぐいと腰を動かし、(以下数行、削除)

 おみつ御前はすでに腰を浮かし、(以下、略)受け入れる態勢になっている。

「ふんぎゃっ!」

 おみつ御前はかっ、と口を開き、仰け反った。刑部狸はぐい、ぐいと腰を前後に激しく揺らせている。かくかくかくと、動きが素早くなった。

 びくうっ! と、刑部狸は痙攣し、その尾っぽがぴん、と直立した。ぱかっ、と口が開き、大きく息を吐く。

 ずりっ、と刑部狸はおみつ御前の身体から離れ、どすんとばかりに尻餅をつく。

「ぐふう……ぐふう……」と、おみつ御前も腹這いになったまま奇妙な唸り声を上げていた。ほかほかと、(数文字削除)から湯気が立ち上っていた。がくりと腰を折ると、そのまま横倒しになり、頭を上げて刑部狸を見つめる。

 刑部狸もまた、おみつ御前を見つめ返した。

 ふっと視線を逸らすと、刑部狸は背後の芝右衛門を見やった。

「芝右衛門……!」

 名前を呼ばれ芝右衛門は「へっ」と小腰を屈めて近づいた。刑部狸は肩で息をしながら話しかけた。

「おぬし、やったな?」

「へへへ……」

 芝右衛門は両手を擦り合せた。


 作者注……今回は自主規制しました。

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