第24話
三
ちゃり、ちゃりーん!
金属の涼しげな音色が男たちの耳に届いた瞬間、全員の動きが止まった。
「そうれ! 早いもの勝ちだぞ!」
もう一度、源二は手の中のなにかを撒き散らす。
「金だ!」
一人の男が喚いた。
「金だぞ!」
わあっ、と男たちは立ち上がった。
「馬鹿、やめろ!」という甚助の制止の声もあらばこそ、男たちは目の色を変え、源二が撒き散らした銭に殺到する。
足元に転がった一枚を摘んで、甚助は首を振った。銭は新鋳の永楽銭だ。この辺りでは、一枚で
くそお……。やられた!
甚助は地面に放り出された火矢を掴むと、きりきりと引き絞る。
ひょお……、と火矢は空中を飛んで屋根に突き刺さる。
途端に、乾ききっていた藁屋根は、めらめらと燃え上がった。
が、源二は屋根にいなかった。とっくに、退散していたのである。
それを見てとった甚助は、慌てて走り出した。わざと手薄にしていた北側が心配になってきたのだ。
燃え上がる屋根が、辺りを明るく照らし出している。
裏手に回ると、がらっと音を立て引き戸が開かれた。中から源二が女の手を掴んで飛び出してくる。
間に合った!
甚助は薄く笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます