20話 青の世界の果て

 下には青の世界。上には星空。

 群青の世界。そこが青の世界の果てだった。

 クラールはたくさんの人に囲まれて育った。

 だが、誰も彼と目を合わせようとはしなかった。

 透明な髪、恐ろしく白い肌と、美しすぎる容姿。そして燃えるような赤い目。

 それが彼を世界から遠ざけた。

 拒絶した。


(俺は一人だ……)


 消えてしまいたかった。

 いなくなってしまいたかった。

 だけど、消えることはできなかった。

 青の世界の果ては彼をつかんで離しはしなかった。

 そんなとき、彼を誘うものがあった。

 異形。それは見えない炎に身を焼いて、翼をはためかせてこちらに近づいてきた。

 月の使者カルマ。奪うもの。


(ようやく、いなくなれる……)


 しかし、月の使者は彼を月へと攫いはしなかった。

 意味のわからない言葉を発して、クラールを飲み込んだ。

 黒の中に、閉じ込められた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る