3:『孤島III』
報酬は、時間。『孤島』に通じる扉が開いてしまった時の先輩の一人が、「え、時間が60 倍になるの?ならイイヨ報酬それで!タイムイズマネー!ウヒャーアアアア」という感じで決めてしまったから...だそうだ。
流石にそれだけでは駄目だというので、卒業時にいくらか報奨金が出るらしい。ただ、それを手にする事が出来た先輩は一人しか居ない。
まあ、この扉が開いたのは去年の1月頃だから、まだ卒業したのが部長で、スナイパーとして豊和M1500を使っている
歩美に茶碗を返され、どんどんお終いにしていく。途中、僚介が水差しの蓋を閉める時に蓋を落としかけて、歩美に少し睨まれた。
建水と柄杓と蓋置き、抹茶を入れておく
「失礼いたします。─田所先輩はどこですか?さっきから姿が見えませんが。」
「はいお疲れ様。随分よくなったけどまだ茶筅の振りが甘いのぅ。─隣の部屋で銃のメンテでもしてるんじゃない?...そういえば沙織も見かけないなぁ。また呼び出しかな?」
「呼び出し?どこにですか?」
「ん?あぁ、軍の方。沙織はよく呼び出されるんだよ。出向って言った方がいいのかもしれないけど。」
「な、なぜ?」
「知らない。というか、知らない方が良いと思うよ。沙織は私たちみたいに何も知らないで茶道部に入ったんじゃなくて、この事態を受けて派遣されて来た子だから。」
「派遣?って、どこから?」
「さあ、それ以上は。─ほれ、座ってないで早く片付けてー。茶碗は?もう洗ったの?」
「...洗って来ます。」
「いってら~。」
僚介は先ほど使った茶碗やら建水やらを持って、とってつけたような流し台で洗いながら、歩美に言われた事を考えていた。
沙織は優しいのだが、寡黙で、必要以上の事を話そうとしない。だからといってこちらを拒絶しているようでもなく─といった印象の先輩だ。
そして奴らと戦う時は1500m以上離れた場所からの超遠距離射撃をやってのける。その精度は同じくスナイパーの田所先輩を軽く上回り...まあ、要するに、「化け物級」の実力を持っている。前々から凄い人だとは思っていたが、そういうことかと合点がいった。まだ謎は多いが。
洗った茶碗を拭いていると、その沙織先輩が中に入って来た。
「あ、お帰り沙織。また出向命令?」
「うん。それより、今全員いる?」
沙織が、少し焦っているかのように言った。
「いるよ、多分。何?もしかして全員出向とか?」
「そのまさか。」
「...了解。みんな、お稽古は一旦中断。出向命令が出た。」
僚介が出向命令を受けたのは以前、入部した時の一回だけ。部室─と呼んでいるプレハブの部屋に、一気に緊張感が走った。
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