第113話 薄紅時間
桜の花に彩られた いつもの坂道
初めて来る場所みたいだった
ボクの隣を歩く いつものキミ
初めて会う人みたいだった
二人で見た 初めての桜
目に映るすべてがドキドキだった
音もなく舞い落ちる 無数の花びら
ゆっくりと流れる 薄紅色の時間
砂時計の底にいるみたいだった
時を刻むのは砂ではなく花びら
キミがボクの髪に手を伸ばす
小さな花びらをつまみ上げてふっと笑う
ボクは思わず目を逸らした
キミの笑顔が
心臓の鼓動が身体中に響き渡る
ただ とても心地良かった
二人だけの薄紅色の時間
そんな時が永遠に続けばいいと思った
今年も桜が満開を迎える
いつもの坂道も薄紅色に彩られる
この季節 ボクはいつもそこへ行く
そして 記憶を手繰り寄せる
時間を巻き戻すことはできない
でも ボクをあのときのボクに重ね合わせることはできる
「今年も会えたね、
うれしそうなキミの声が聞こえた気がした
それはわかっている
キミは二度と会えない人
それもわかっている
割り切ろうとする思いと捨てきれない想い
二つのオモイは葛藤する
ボクは矛盾を見せられる
同時にいつも魅せられる
二人の薄紅時間に
RAY
詩みたいなもの RAY @MIDNIGHT_RAY
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