15
歩き始めて早々、
「ねーねー、携帯番号ぉ、交換しようよぉ」
「あ、そうそう、間に合わないかと思って電話かけようとしたら、よく考えたら番号聞いてなかったですぅ」
さも当然のごとく、遅れたことを正当化しようとする沼田さん。
「携帯電話なんか持ってない」
「俺も」
アパートの電話だって
「電話、共同電話だし」
私がそう説明すると、驚いたように
「「「えーっ! 今時?」」」
まるで示し合わせたかのように、三人の声が重なる。
「悪かったな、持ってなくて」
健が、虫の居所がわるいのか、吐き捨てた。
「じゃ、買いに行きましょ」
「無理、お金無いから」
「じゃ、バイトとかは?」
「しなきゃならない、とは思っているが、ま、落ち着いてから。今すぐどうこう、というのはない。すぐに携帯電話も買えない」
そんな、取り付くしまもないような健に二人は食い下がろうとする。
「と、取り敢えず、番号だけでも教えてよ」
「そうだよ、ゐすゞちゃんにラブコールができないと、困っちゃうから」
「しなくていい。」
小田さんの言葉に芦田さんが突っ込みを入れる。
「あと、白神さん、名字で呼ぶのやめよう! あたいは涼子、彼女はみう、こいつは隆史、そしてあなたはゐすゞ。OK?」
「うん、芦田さん」
私がそう返答すると、
「もう、私は涼子なの! いい、ゐすゞ」
と、そう訂正してきた。
「わかった、涼子。」
そう言うと、涼子は満足げな様子を見せた。
「じゃ、まず服を買いに行こうか。俺はゐすゞちゃんをエスコートするから」
そういって、隆史は私の横に立つのだが、
「似合わなすぎ」
目を細め、しらけた感じの目つきで涼子は隆史を睨んだ。隆史は私から少し離れるように足をスライドさせる。しかしながら、涼子かきびすを返すと再び隆史は私に寄ってくるのだが、それを察知した涼子に再び睨まれる。
「あ、あー、わかったよ。涼子の前に行くから」
そう言って、平身低頭で涼子の横を過ぎると、そのまま掻き消えるように駆けだしていった。
「もう、隆史ったら」
腕組みをした涼子がため息交じりの声を漏らす。
「ま、あの様子ならばぁ、あの店じゃあないですぅかぁ?」
「ま、そうだろうな」
みうの言葉に涼子は同意する。
そう言って、涼子は隆史の行った方向と反対方向に足を進めた。
「追わなくていいのか?」
「行かない」
健の提案をかたくなに拒否する、涼子。私は、ちょっと尋ねてみたのだが……。
「どうしてなの?」
「行けば分かりますよぉ」
みうは、手招きをしながら隆史を追う。私も健もそれを追う。
「ま、待ってよ!」
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