第1147話「駆け抜けるさなか」

「総管理長っ! 何をしている!! 今すぐ手を放せ!!!」


「……」


 みしみし木がきしむような耳障りの悪い音が、部屋の外まで聞こえてくる。

 このまま、何もしなければ行きつくところは闇でしかない。

 本来であれば、命を懸けてまで絶対に勝てない相手に挑むようなことはしない。


 それは今しがた身をもって経験したところである。

 だが、目的を果たすためには避けては通れないと来たものだ。

 迷いなんてあるはずもない。


 一回、二回、三回……と軽いステップで距離を詰める。

 今まさに限界に達する直前にイリスは、正体も分からない人型の足めがけてタックルするしかなかった。

 自分の全身全霊をかけた強烈な突進から、衝撃委は部屋全体へと響いた。

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