第1144話「下層階は未知に呑まれた」

 煙が下層階を満たすというのに、最早振り向くことはない。

 残された時間はそう多くはない。

 ただ、上に、前に、先に、進むだけである。


 止まることのないこの。時間の渦にとらわれてはいけない。

 ジュンがいつ戻ってくるかもしれないというのに、ふりかえってなどいられようか。

 その刹那すら惜しい。

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