第1109話「連れ添った従女のように」

 自分勝手に責任の有り様を決められたくはない。

 人を裁くことには責任を伴うのだから、容易に判断できることではない。

 それも命にかかくぁるというのならば、これ以上の決断はないと言っても決して言い過ぎではない。


「変わっていると言われたことはない? 誰だって自分を殺すなんて言ってる人が殺してなんて言ってくれれば喜んで殺すでしょ? 私ならそうする……」


「騙されるとでも思ったか? 俺を殺せるタイミングはいくらでもあったってのにそれをしなかっただろ。仮にそんな隙なんてなかったとしてもその気なら何かしらの行動を起こせた。それをしない理由なんて多くはない」


「あなた、家族を人質に取られている……いえ、囚われているのはあなた自身です。違いますか?」


 ユノンは諜報活動を行っていた少女を責める口調ではなかった。

 まるで、子供のいたずらを正し二度と過ちを起こさせないために案じる親のよう温かい声色だった。

 その声には心に響かせるには十分すぎるほどの素直な気持ちが重たく乗せられていた。

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