第940話「父上之為」

『父上之為』


 誰かの声がかすかに聞こえた気がした。

 そして、何事もなかったかのようにユイナはそこに立っている。

 だが、すべてがなかったことにはならない。


 投擲した本人は状況が呑み込めずに、瞬き一つできずにこちらの様子をまじまじと見つめている。

 装備は兵士のそれだが、ユイナも俺をもたばかり正確に狙いを定めたその一撃は確実にユイナの命を奪うことができていた。

 あの声はいったい何だったのか。


 俺はガルファールにふれたまま、敵の出方をうかがっていた。


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