第910話「面をつける者」

 

 そこに現れた人物に対して、意表を突かれた。

 当初は奴隷商人その人が、事の次第を説明するために待っているものと思っていた。

 それが、顔を隠した人間が出てくるとなると不信感が先に抱いてしまうのは仕方がない。


 顔の表面を四分の一を隠す木彫り人面のようである。

 俺の生まれた国の古来に催した催事で使用された面に似ているが、まるで生きているかのような質感が感じられる、

 遠目には面をつけているなどとは思えないだろう。


 しかし、目前では面であることは疑いようもない。

 そこが極めて妙なところである。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る