第880話「俺の抱く少女の未来を担うは夢の果て」

 責任を転嫁された当事者になってみれば笑い事ではない。  

 なんとか死なせずに済んだというだけで、いつ目を覚ますかわからないのだから穏やかではない。

 俺は抱きかかえた少女のあまりの軽さに目頭が熱くなる。


 自分の無力さとこんな自分によって死ぬことを拒まれたことをなんとするのか、目を覚ました時に何を言われるのかを想像するとやるせない。

 之からのことを考えられる余裕があるのだとすれば、この殺風景な部屋でさえ不思議と趣がある雅な風景に見えてくる。

 死を匂わせる空間であったことが嘘のようだ。


「私が言えることは、奴隷は生きてあなた様のものになったということだけのようですね。お帰りはこちらになります」


「おい、話は終わってないぞ!!」


「今日は早く帰られた方がよろしいかと存じます。形はどうあれ、近くお会いすることになるのですから」


 誘導されるがままに俺は屋外へと歩み始めていた。

 

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