第790話「無味」

 子供たと思い侮る盗賊。

 油断をしつつ、人質というセオリー通りの動きしかしない。

 そこに意味などありはしない。


 アスには盗賊が次にどう動くかが手に取るようにわかる。

 それは人質に対しても同じ。

 追い詰められれば、本来切り札であるはずの人の命でさえ捨ててしまう。


 その結果は敗北を意味するというのに、狂気に苛まれてしまえばその限りではない。

 二人の距離は一向に広がることも縮まることもない。

 視界から外れるようなことはない。

 

 互いに視線を逸らせない。

 

 

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