第725話「君の為に何ができた」
血の一滴も流れることもなかったレストラン跡を後にした。
一瞬のうちに消し去られるとそこには何も残らないことを知った。
人は血が流れているのだから、すりむけば血が流れる。
場合によっては身体が引きちぎられることだってあるだろう。
何も残らないなどと言うことはない。
それが一人の人間が手も足も出せず命を絶たれ、あまつさえ遺品になるものも残せなかった。
圧倒的な力の差をこれでもかと味わってきたが、未だに慣れない。
さっきまで晴れていたというのに、外は雨が降り皆足早に駆けていく。
まるで敗残兵のごとく帰路につこうとしている俺達の心情のようだ。
小説では場面の移り変わりを天気や環境の変化で表すことが多々ある。
あくまでも比喩の域をでない。
だが、今はどうだろう。
辺り一面暗くなり、もう数刻前に戻れない事への絶望を思い知れと言わんばかりである。
どこで間違えた。
バニティーに一太刀浴びせていれば会話位は出来ただろうか。
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