第653話「朝食もさることながら」

「お食事をお持ちいたしました。食器は扉の前へ出しておいていただければ結構でございます」


「ありがとう」


 調理された香りが部屋中に広がると、眠っていたスペラも勢いよく目を覚ます。

 全員が囲むことができる程のテーブルが備え付けられているのも、宿としては珍しい。

 共有スペースでもないというのに、後10人は席を設けることが可能な程の広さは目を見張るものがある。

 

 食事を楽しめるのは環境、料理、時間があってなせるものである。

 どれが欠けても今一つ満足がいくことはない。

 規則的に食事をとることも難しいからこそ、この瞬間が極まる。


「今日一日は情報収集に専念する。幸いにも三泊は保障されてる。誰もが同じ大愚なのかどうかは定かではないが、今の状況を利用しない手はないだろ」


「最後の一日は予備日にあてた方がいいかな。何が有るかわからないし」


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