第524話「恐怖が舞う、花吹雪」

 これからの動向を窺っていればその答えがわかるはずである。

 しかし、その本人は刀を掲げたまま微動だにしない。

 朱く染まった空から花びらのようなものが舞っているようだが、無関係でないのは想像に難くないのだが理解が追い付かない。


 ゆっくりゆっくりと落ちてくる花弁は光に反射し、美しさと雅な趣が故郷の古都を思わせる。

 懐かしさのようなものを自分勝手に感じていると、まったく的外れなものだったと公開後悔させられることとなった。

 何故ならその花びらに触れたものは問答無用で消滅を余儀なくされたからだ。

 

 まるでそこには何もなかったように花弁が海獣も獣人も、海底でさえも通り抜けていく。

 ただし、通り抜けたところにあった物は有機物も無機物も区別することなく消し去っていく。

 そこには抵抗というものが感じられない。


 あたかも初めからそこには何もなかったかのように花弁は右に左に大きく揺れる。

 海獣の巨体であれば何度も出たり入ったりを繰り返す。

 その光景は幻想的などではなく、ただただ悍ましい光景としか言えなかった。


 


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