第442話「引き延ばされる世界の中で」

 俺の代わりにユイナを救ってほしいと視線の向かった先には、すでに左腕を引きちぎられたディアナの姿があった。

 それもそのはずだ。

 仲間の危機だというのに、黙って見ていられるもの者などここにはいない。


 それができぬ事態がまさにここ一帯で起きているのだから、縋るものなんてものはありはしない。

 バニティーは三体もの巨大人猿を一人で相対し、足止めをしている。

 ルナは二体と、周囲の取り巻きの膝下ほどの人猿と辛うじて引きつけこちらへの意識の流れを断っている。


 スペラの姿は見えない。

 やられてしまったなどとは思いたくはないが、ディアナの事もある以上気が気ではない。

 これがコンマ数秒で読み取れた情報の全てであり真理だ。

 この現状を打開するすべなどあるのかと。

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