第381話「諦めない」


 この世界では生まれながらの境遇によって必ずしも善し悪しが決まることがない。

 貧しく十分な教育が受けられなくとも、行動次第で世界をひっくり返す可能性がある。

 それは受動的な者で巡ってくる可能性があるのだから、生きることをあきらめなければ逆転の可能性は誰しも平等であると言える。


 それはこの世界が願うべき神と言える存在が確かに存在していることからも容易に納得するに値する虚像を与えてくれる。

 裏を返せば生きることをやめたとき、その者を容赦なく退場させるだけの要因も確実人存在していると言って差し支えはない。


 スペラの力もまた生まれながらの素質と外的要因が合わさったことでその力は格段に変わり姿を変えたのだ。

 ディアナがそんな少女に重ねたのは数千年前の自分の面影だった。

 境遇も状況も違っていたはずなのにと思うのだが、靄のかかった彼女の古い記憶が懐かしさを感じてようやく目的に近づいた気がした。


 地理でいうところの目的地に辿り着く為にはこの靄を完全にはらすことが必要なのか。

 それとも記憶が鮮明になることで目的が果たされるのか。

 どちらにしても一歩ずつ確実に前に進んでいるという事が実感できるだけで、安心感を膨大な選択肢の中から選んでいるということに他ならない。



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