第353話「もう戻れない」

 一切の迷いなく進むバニティーに俺達がついて行けるのは、所々振り返ることなく速度を落とし歩みを合わせる心遣いによるものだろうか。

 否、そうではない。

 それが、優しさに感じられないのは淡泊な態度だからではない。

 

 何も感じられないからである。

 護衛や利害関係など態のいい文句でしかないことは改めて理解することになった

 この森の事を完全に知り尽くしていて尚且つ、雑魚モンスターは俺達が捕捉し思考するより早くのしてしまう。


 その流れは堰き止められることを知らない。

 まるで最初から何もなかったかのように突き進んでいくのだ。

 

「みんな、まだまだ目的地まではある。疲れたらすぐに言ってくれ」


「アマトが一番無茶するんだから、アマトが休むタイミングで休憩にすればちょうどいいんじゃないかな」


「ユーニャの言う通りにゃ。アーニャに合わせれば絶対大丈夫にゃ」


「一番体力がないのがアマト君だから、アマト君に合わせれば誰もいう事はないと思うけど」


「この中で唯一の人間はアマトさんだけですからね。私もその方がいいかと思います。と言ってもあんまり無理をすると人間でいられなくなりますよ」


 ディアナは意味深な事を言ったがこの時はもののたとえだと切り捨てた。

 無論聞き入れたからと言って、取り返しのつかないことには変わりなどなかったのだ。

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