第326話「抱え込んだ疑惑」

 人数が増えれば機動力が落ちるのは目に見えている。

 考えなければならなき事は幾星霜。

 

「ダーリン、早く行こう。ボク……落ち着かない」


 ルナがべったりと密着する。

 みんななんだかそわそわしているように見える。

 伝播してなのか、俺も言いようのない気持ち悪さを感じていた。


 結界が消えてから急に感じるこの感覚は周囲の造形ではなくこの土地に由来するものと、直感が訴えている。

 背筋が凍りつくように寒気が一定の間隔でやって来る。


 この場所にいてはいけない。

 

「みんな、ゆっくりしていたいところだが先を急ぐ」


「私たちはいつでも行けるよ」


「さあ、行きましょう」


 バニティーは家を長期間空けるというのに、施錠はしなかった。

 鍵穴はある。

 

(信用する要素が見つからない……。隠すつもりもないって事か?) 


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