第309話「回答は如何に」
周囲は整備などされていないというのに、この建物は上手く溶け込むように建てられている。
部屋の数もドアで区切られていないもののざっと三部屋あり、一つ一つの部屋も十畳程はあるのではないだろうか。
一人で住むには十分すぎるほど広く感じられた。
「壁ばかりなんぞ見とらんで、こっちさ来んが」
「これはあんたが彫ったのか? 俺が言うのもなんだが、こんなに魅入られたのは初めてだ」
芸術何て理解する感性など持ち合わせていないと思っていたのだから、そんな人間を引き込む程の技術と才能をこの男が持っているのだと思った。
それはここにいる誰もが思ったのではないだろうか。
「貴方の作品なら、詳しくお伺いしたのだけど如何かしら」
ディアナの瞳に見据えられた男は動じずにいる。
時間が止まったと錯覚した。
誰も微動だにせず男の返答を見守っていたからだ。
それほど、この壁面に彫られた情景は重要なものか。
その判断も出来ない。
重い空気の中、スペラの寝息が規則正しく聞こえてくる。
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