第302話「向かう先には」
疑いつつもほいほいついて行くというのだから自分の警戒心がそれほど高くはないのだと改めて思うが、それもここでは度胸だとしたい。
スキルが危険ではないというのだから、それを素直に信じていると言えばそれまでなのだがやはり鵜呑みにするのは些か不用心か。
そして、この男は礼儀とは無縁の存在だという事。
草木がを踏み均して森の奥へと向かう男。
俺達はこの男が何者なのか一切を知らず、名前ですらまだ聞けていない。
そもそも道端で出くわし安全な場所へと誘導してくれるただの善人というだけで事足りるのだ。
意味もなく名乗りだす人間など、元の世界にはそうそういなかった。
道を聞いただけで名前を聞かれたり名乗られたらそれはナンパな人間なのだと全く善人などとは思いもしない。
むしろ怪人以外の何者でもないなどと思うのではないだろうか。
国や世界が違えばやはりその場の雰囲気で、印象が変わってしまう。
しかしながら、周囲がざわめきはするものの獣が寄ってこない。
「アマト、ついて行って大丈夫なのかな?」
「理由はどうあれ俺達は生かされてる。放っておけば俺達はあそこでしんでただろから、取って食われることはないと思うが……」
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