第267話「迷走すればこそ思ふ」

 俺はディアナともと来た道を急遽引き返していた。

 ところどころに見受けられる灰と化した生命の痕を見るたび、不安と恐怖に苛まれるからである。

 死がまき散らかわれている惨状から勝手に強大な悪意を想像してしまう。


「一体何をどうすればこうなるんだよ。ディアナは何かわかるか?」


 息を切らせながらもディアナに投げ掛ける。

 急いではいるものの、ディアナとの距離は離れすぎず近すぎ過ぎることない絶妙な距離感を保っている。


「いえ、残念ながら」


 本気で走ったところで彼女ならはぐれることなど無いのとわかってはいるものの、自分自身が落ち着き冷静に物事を考えられる時間というものを確保したいという考えあっての行動をとらざる負えなかった。

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