第214話「痛みを感じるからこそ」

「アマト……信じてた」


「アーニャ!! なんかすごい火柱が見えたにゃ!! アマトがやったにゃ!?」


「アマトさん、無事で何よりです」


「俺のことはどうでもいい。みんなが無事でよかった。ユイナが守ってくれたんだろ」


「私も少しはアマトの力になれたかな……」


「もちろん。ユイナだから俺も単身で動けたんだ。誰でもってわけにはいかないだろ」


「ユイナちゃんもアマトと似た魂の持ち主だからね。ボクもアマト君と同じ意見」


「にゃーにゃー、あれ、アマトがやったにゃ?


 空気を読まずに後方で未だに燃え盛る焼野原を指さすスペラに、肩の荷が下りた気持ちになった。

 ずっと緊張状態なのだとここで初めて思い知らされたのだ。

 俺はその場であおむけに倒れる。


「あれは恐竜がな、火を噴いたんだよ。この世界は恐竜が火を噴いて暴れまわるのが普通だったりするのか?」


「ミャーはみた事ないにゃ。見てみたかったにゃー」


 相変わらず好奇心旺盛なスペラが俺にのしかかりながら騒いでくる。

 どかそうにも全身が筋肉痛にでもなったかのようにピクリとも動かない。

 ステータス上では健康そのもので魔力等も回復しているというのに、空腹や筋肉痛にだるさといったものはしっかりと感じることができた。


 それは自分が生きた人間だと実感できるポイントであった。

 この感覚が無くなった時自分が人間だと言えるのだろうか。

 それを明確に判断する材料など持ち合わせていなかった。

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