第167話「あと一歩が届かない」

 徐々に水気がひいて行き足にまとわりつく嫌な感覚も和らいでいく。

 踏み込む力も次第に増していく。

 

「もう少し、もう少しで追い付ける。待ってて、すぐに行くから」


 ユイナは渾身の力を込めて跳躍を試みた瞬間、足首に激痛が走る。


「痛っ!!」


 声にならない悲鳴を上げユイナは膝から崩れ落ちた。

 幸い水位がひざ下まで下がっていた為、溺れるようなことにならなかった。


「ユーニャーーーーー」


 スペラの悲痛な叫びがどんどん遠ざかっていくのが聞こえる。

 足から流れ出す血がじわっと広がっていく。

 水は濁り、水量もあるというのに目に見えて赤く染まるところからも出血の量は少なくはない。


 咄嗟に手で押さえたユイナはすぐに回復魔法を足に施し傷を塞ぐことができたのだが、失った血は戻ることはない。

 何が起こったのかもわからない状態で迂闊に動き回ることも出来なくなった。


 水中からの攻撃なのかはたまた、遠距離から狙撃されたのかもわからぬまま見えない敵に文字通り足止めされることになってしまった。

 

「このままじゃまずいよね」


 みるみる距離が離れていくスペラ達を助けることができない自分がみじめでならなかった。

 

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