第143話「沈みゆく村」

 二人はこの雨がどの程度の範囲で降っているのかを正確に把握してはいない。この村を中心にしているというところがわかったとしてもそれ以上のことまでは理解が追い付いていかない。


 目の前の現状を打破することすらも困難なのだから仕方がないと言える。

 ひざ下まで流れる濁流が今が危険な状態であることを物語っている。

 足を取られるようなことがあれば忽ち流されてしまう。


 それにこれだけ激しい雨であれば診療所もただでは済まないだろう。周囲の建物は流されてしまったり床上浸水により壊滅状態となっていた。

 それも建物にぎりぎりまで近づかなければわからない視界のなかで確認できた僅かな状況だ。

 場合によっては流されてきた建物に巻き込まれる危険性もはらんでいた。


 二人はそれでも目的地へと着々と戻っていく。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る