第124話「不安と焦燥」

 止むことなく降り続ける雨。

 それは沈んだ心そのもののようだった。

 朝食を食べていないにもかかわらず食欲はわいてこない。どんなに気持ちが沈んでいてもおなかは減るものだと聞いたことがあるが、必ずしもすべてにおいてあてはまるものではないらしい。


 誰も食事をしようとも言ってこない。悪魔も腹が張るのだろうかと思ったが人間の肉体を使って受肉を果たしたのだから、恐らく人間と何も変わらないのではないかと予想できた。

 あくまで推測の域はでないのだが、それを確かめる気にもならない。


 常にどうするか、どうしたら良いのかを考えてきた。

 そして、必ず先手を打たれて後手に回るという後追いの状況から抜け出せてはいない。やられてからやり返すのでは遅い。


 命を落としてしまえば取り返しがつかないのだから。悪の組織が狙っているというのならこちらから組織をつぶすのもいいのではないかと思ったが、現実的ではなかった。

 子供の剣かじゃないのだから、返り討ちに合うか闇討ちを恐れて生きていかなければならない。報復を恐れていても始まらないのだが、やはり怖いのだ。


 それでも、アビリティ、スキルとそれらをもろともしない奥の手、即ち対抗策がないわけではない。

 今この時ではないというだけで。

 守るものがあればうかつな行動は許されない。自分一人ではないのは重々承知で動かなければ未来はない。


(スペラ……早く起きてくれ……)


 二人が目覚めたときに動けるように策を練ることが今重要なことだ。

 

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