18_雨を呼ぶ観客

甘さの中にカビに似た香りが鼻を撫でる。


来たなと思った刹那、彼女は既に僕の目の前にいた。


「今日はどんな気分?」


「闘牛のように荒々しく激しいのをお願い」


僕は鍵盤に指を乗せリクエストに答えた。


終演の時には彼女は消えていた。


代わりに、荒々しく激しい雨が世界に舞い降りた。

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