第175話・衆目とのこと
聞き間違い? それともただの空耳でだと、誰か言ってよバーニィー。
「なっ? い、いきなりなにを言って?」
オレ以上に唖然としているメイゲツが詰め寄るようにレスファウルにたずねる。
「なんじゃ? 噂ではまだフリーなのじゃろ? それならば別にキスのひとつやふたつ容易いではないか?」
「ちょ、ちょっと待ってください? シャミセンさんには――」
「なんじゃ? もしやすでにいるとでも言いたいのか? それともお前さんがそうだと?」
それは違うだろと言わんばかりに、余裕のあるレスファウルの微笑。まぁそのとおりなんだけど。
「……そ、それは違いますけど」
無言の圧力に押し負けたのか、メイゲツが困惑した表情でオレに視線を向けてきた。
「うむ、つまりはそこの
オレが視線を逸らすやいなや、レスファウルがくすくすと嗤う。
「そ、そうじゃなくても、い、いきなりそんなハレンチな約束事をしていいんですか? 男性が言ってきたのならまだしも」
それはいいけど、タイムリミットを考えるとそろそろエスカルピオ討伐しにいかないといけない気がするんだが。
カランコロンと、店の
「メイゲツ、大丈夫?」
入ってきたセイフウとハウル……そのうしろにはテンポウとセイエイがいる。
「っていうか、お腹膨らんでない?」
「やっぱり徐々に成長しているとしか」
そういえば、残り何時間だっけ?
◇神魔誕生まで……【3:15】
ちょっとヤバくなってませんか?
「あれ? なんでレスファウルいるの?」
レスファウルが[恵風]にいるのに気付いたセイエイが、首をかしげる。
「あら、セイエイもログインしてたんだ」
んっ? どことなく知り合いっぽい話し方だけど。
「あぁ、彼女はナツカさんところのメンバーですし、セイエイちゃんも星天遊戯の時によくパーティーになっていたみたいですよ」
テンポウがそう教えてくれた。
「あれ? ナツカのところなのはわかったけど、それならなんでメイゲツは知らなかったの?」
たしか双子もナツカのギルドメンバーだったよな?
「それはまぁ一言で言えばログイン時間だろうね。儂は基本的に夜中のほうが多いし」
ニート。まさにニートのログイン時間っ!
そりゃぁ学校のある双子が知らないってのもムリはないか。
クエストの参加条件は、呪いにかかっているプレイヤーのフレンドになること。
これに関してはシステム上できなくなっていると思っていたがそういうことは起きなかった。
メイゲツはレスファウルとフレンド登録を済ませる。
「それじゃ、とりあえずパーティーを組もうかね。場所は大体わかってるんだろ?」
レスファウルからパーティー申請が来た。とりあえずOKしておこう。
「クエストの変化とかあるんだろうか」
「今回のクエストはあくまでアイテム取得がメインですから、おそらく他の方とパーティーを組んでも大丈夫だとは思います」
ジンリンをジッと見据え、
「なにそれ」
とレスファウルが聞いてきた。
「シャミセン専用のサポートフェアリー」
「えぇ、なにそれ?」
まぁそれはいいけど、そろそろ探索に出ないと時間がないと思った時だった。
不意にマントが引っ張られ、オレは視線を好奇心旺盛な少女に目を向けた。
「――いく」
セイエイがオレのマントの裾を親指と人差指で軽く握って引っ張っていた。
「セイフウとハウルから話は聞いてる」
◇セイエイ/Xb11
彼女の簡易ステータスを確認してみると成長していた。
うーんマジで置いてけ堀だなほんと。
「あら? セイエイが異性と普通に会話してるって、余程のことな気がするけど」
レスファウルが首をかしげ、セイエイに声をかける。
「同性でも素直にならないのにねぇ」
「セイエイちゃんって、魔獣の時もそうだったけど、ビコウさん以外はあんまり自分から声をかけるみたいなことしなかったからねぇ」
テンポウが、それこそ幼い子どもを見るような目でセイエイを一瞥した。
「そういえばテンポウとセイエイって魔獣からの知り合いだったんだっけ?」
「そうですね。まぁ魔獣はあんまりハマっていなかったので、星天を始める時コンバートしてませんでしたけど」
「それじゃぁオレの知り合いで魔獣からのコンバートはハウルと斑鳩だけってことか」
「星天遊戯がサービス開始して半年経ってからのコンバートサービスでしたからね」
あぁ、だから斑鳩がオレを星天遊戯に誘ったくせに、自分は始めなかったのな。
エスカルピオ討伐のパーティーメンバーはオレとレスファウル、セイエイとなった。
ハウルとテンポウはここに残って情報を集めてもらう。
「それからセイフウ、お前は一回ログアウトして、現実でのメイゲツに変化がないか確認してくれ」
「でもゲームの中ですし、実際に変化があるというわけじゃ」
「もしものことがあるからね。ビコウさんが言っていたけど、便利なものほど悪用されやすい。ギアが脳波を感知してゲーム内に変化を与えているということは、その逆もありえるってことだよ」
「……わかりました。ハウルさんとテンポウさんはメイゲツをお願いします」
そう言うと、セイフウはメイゲツに一言二言ほど会話を交わすや、店を後にした。
それから数分して、セイフウのログアウトが確認できた。
「うし、それじゃオレたちも行くか」
「あ、そうだ煌兄ちゃん」
魔法盤で転移魔法の魔法文字を出そうとした時、ハウルが呼び止めてきた。
「今回のクエストだけど、本当にあの方角で合っているかな?」
「合っているかって、自分が云ったことに自信がない?」
聞き返してみると、ハウルはうなずいてみせた。
「宿屋で気持ちの整理をしている時にちょっと気になったから色々調べたんだけど、占星術における黄道十二宮って星の流れによって方角が変わっていくみたいなんだよ」
「なるほどね、まぁそれは大丈夫だろう」
オレがそう応えるや、ハウルは片眉をしかめた。
「実際の占いでならそういうやり方もあるんだろうけど、あくまでゲームの中だ。たとえば時間による太陽の位置なんてすぐ答えられないだろ? 日の出、日の入り、正午だったらまだわかるけどな」
日の出は東、日の入りは西。正午は基本的に自分の上に太陽があるものだと思えばいい。
が、星の流れなんてものは方角が定まっていないようなものだから、ゲームの中でそんなことをしてしまってはフェアじゃない。
「そもそも、今回のクエストだって、言葉を知っていたり、ホロスコープ上の黄道十二宮の位置がわかっている人じゃないとクリアは難しい」
「他のプレイヤーも最初の謎かけはクリアできていたけど、やっぱり蠍座がどの方角なのかってわかった人はあんまりいなかったね」
それを確認するためにも、まずは[エメラルド・シティ]にテレポートして、北東を目指してみるか。
¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ¶
[エメラルド・シティ]に到着し、そこから東北を目指していく。
「その間にレベルが上がればいいと思っていた時期がわたしにもありました」
戦闘……したいんだけどなぁ。MOBがポップされたり、オレたちを見つけるなんてことがあっても、なんか避けて通っている。
「養分っ! 養分が逃げていくっ!」
パッと見ただけでもXb10くらいのMOBも出てるのにぃっ?
「お、おそらくレスファウルさまの高いレベルでしょうね。自分より倍以上あるプレイヤーには近付こうとはしませんから」
ジンリンが教えてくれたが、なんだろ凄く矛盾している。
「レスファウル、なんで第二フィールドまでしか行けていないの?」
「そういえばオレもそこは気になってたんだよな」
「まだフィールドクエストクリアしてないから、第三フィールドまでイケてないんだなぁコレが」
理由がなんともはや。
「……本当なら行けてもおかしくないレベルなんですけどね」
「ジンリン、前に教えてくれた十二枚のカードがそれじゃないのか?」
「と言ってもボクもあまり知らなかったり、教えてもらっていないこともあるので」
視線を感じ、そちらを一瞥する。
「どうかしたの? レスファウル」
「いや、そのジンリンって妖精さ、NPCの割には結構受け答えできてるよね?」
「さ……サイシンのAIはジドウガクシュウキノウがヒョウジュンソウビですから」
聞かれたくないことを突っ込まれたのか、ジンリンはカチコチとした声で返事をする。
「ふーん、まぁどうでもいいけど――モンスター出て来てるわよ」
あら? さっきジンリンが言っていたレベルの差による恩恵はどこに行った?
「多分、あくまでモンスターの性格とかで決まってるんだと思う」
なるほどね。
◇アリコハオ/Xb10/属性【火】
◇カフェケルド/Xb10/属性【土】
◇モノヴェール/Xb10/属性【風】
◇ルラキシンミャ/Xb10/属性【水】
MOBが四匹。ほとんどが猿でXbは10固定。
エレメント四色揃ってる。
四匹の双眸と毛色は、それぞれ緋、茶、緑、藍になっているのだけども、なんか一瞬目が光ったような気が……。
◇プレイヤーのステータスに変化がありました。
なんか妙なメッセージがポップされた。
ステータスを確認してみると、
【シャミセン】/見習い魔法使い【+5】/4832K
◇Xb:7 ◇次のXbまで:37/70【経験値247】
◇HT:154/154 ◇JT:343/343
・【*CWV:20+2】
・【*BNW:20+2】
・【*MFU:23】
・【*YKN:19】
・【*NQW:34+15】
・【*XDE:88+14】
*現在CWVの基礎値ー9
*現在BNWの基礎値-3
*現在YKNの基礎値-4
*現在NQWの基礎値-5
*召喚魔法に制限がかけられています。
*魔法文字展開時間が86秒となっています。
なんか色々とステータス変化食らってた。
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