第56話・玉龍とのこと
[シャミセンのレベルが上昇しました]
[セイフウのレベルが上昇しました]
[メイゲツのレベルが上昇しました]
[レイドボスクリアアイテム[メダルのかけら]を手に入れました]
[SRアイテム[
[ステージクリア特典として、パーティーのHPとMPを全回復。5000Nがプレイヤーそれぞれに与えられます]
インフォメーションと同時に、ゴウコウがいた場所にメダルのかけらが3つと、髪飾りが現れた。
メダルのかけらは形が同じものだった。複雑な形だった。
もうひとつの[玉龍の髪飾り]っていうのは?
それを手に取って鑑定してみた。
[玉龍の髪飾り] I+30 L+20 ランクSR
通常攻撃のさい、モンスターにマヒ効果を与えることができる。
■■■■■■■
説明の割にステータス増加がいいんですが?
しかもなんかほかにも効果がありそうだ。
「シャ、シャミセンさん? な、何だったんですか? 今の……」
双子が目を見開いてオレを見てる。
「えっと、あれなぁ」
正直言って、あれって魔法なのか?
チャージと違って、魔法取得のアナウンスもなかったし。
とりあえず図鑑には載っているだろうから調べてみよう。
まずは[紫雲の法衣]と一緒に手に入れた[ライティング・ブラスト]について……。
[ライティング・ブラスト] 属性・陽
ライトニングの変異魔法。
最初はちいさく弱いが、ダメージにクリティカルが追加されると、ふたたび光の矢が作り出され攻撃を繰り返し、クリティカルが続くほどダメージが蓄積される。。
その攻撃はクリティカルダメージがなくなるまで、永遠に繰り返される。
なんかすごい複雑な魔法だった。
「えっと、つまりクリティカルが続くと、その回数だけダメージが増加するってことですか?」
セイフウが首をかしげる。
「あ~っと、なんかそういう、似たような昔話があったような気が……」
「あれじゃないですかね? 最初に一粒の米粒をもらって、翌日は前日の倍の米粒をもらうっていう」
そうそうそれそれ。メイゲツが喉に引っかかった魚の骨を取ってくれた。
ようするに最初は1しかないダメージでも、クリティカルが続くごとに、二回目は2、三回目が4……8、16、32、64、128、256、512、1024、2048……。
と、ダメージが倍々になっていくというわけだ。
さて、もうひとつの、[ワンチュエン]というやつ。
魔法図鑑には載っていなかったので、体現スキルの方にも目を通してみたが……どういうわけか、どこにも載っていなかった。
「あぁっと……」
オレはセイエイにチャットをかけてみた。
「もしもし……シャミセン?」
「あぁ、忙しいのにゴメンな」
「それは大丈夫。まだボス部屋見つけてないから……それでなんの用事?」
オレはセイエイにゴウコウを倒したことと、その戦闘中に装備品が変化したこと。
そして[ワンチュエン]について説明した。
「……なにそれ?」
意外な反応だった。
電話先のセイエイがいつもの淡々とした声とは違って、本当におどろいた声を上げている。
「えっ? 聞いたことない? 装備品が変化する? そんなことあるの? わたし初期のころからやってるけど、そんなこと一回も起きたことない。もしかして熟練値とか条件関係してる? それに[ワンチュエン]ってなに?」
こっちが聞きたいことを逆に、捲し立てるように聞き返された。
「えっと、セイエイさんも知らないってことですか?」
「知らない以前に、シャミセン、[チャージ]を使う時の魔法詠唱をさらに伸ばしたの? 普通そんなことしないし、しかもそんな状況で?」
これはまぁあれだね。[紫雲の法衣]の効果がなかったら絶対してなかった。
本当に一秒の差だったものなぁ。
ただ、もしソロでやっていたらそんな自殺行為はしていない。
これはあれだ。チャージを取得する時、周りでビコウたちがオレを守ってくれたのと同じように、双子がオレを守ってくれると信じていたからできた。
「クエストが終わったらフチンとおねえちゃんに聞いてみる」
「頼んだ」
相談相手が、この事態の理由がわからない以上、これ以上聞くことはできない。
「……やっぱりシャミセンってぜったいおかしい。なんかLUKとかじゃなくて、それ以上のなにかがある気がする」
愚痴っぽいことを言いながら、セイエイは電話を切った。
「白状したほうがいいですよ。データを改造してるとか」
双子がジッとオレを凝視する。
してないから。というか、そこまでプログラミングの知識ないから。
わけのわからないスキルを手に入れてしまい、オレは頭を抱えるしかなかった。
「あっ、これありがとうございました」
メイゲツが羽織っていた[玉兎の法衣]をオレに渡す。
咄嗟に法衣を羽織らしたが、どうやらかぶっていると、元々の装備に重なるようだ。
両方ともというのは虫のいい話で、一番上の装備が優先されるとのこと。
「新しい装備を手に入れたし、こっちはLUKで体力が増加するみたいだからなぁ」
常時HP回復は捨てがたいが、それよりも先に、いつもどおりレベルアップのポイントをすべてLUKに振り分けてみた。
これでLUKの合計値は185になって、VITは基礎の9に55増加される。
ということは合計で64になるから、計算するとHPが768になるわけだ。
「それで、この[玉龍の髪飾り]は誰が持ちます?」
セイフウがオレにたずねる。
「ゴウコウを倒したのはシャミセンさんの[ライティング・ブラスト]ですから、シャミセンさんが装備するべきだと思いますよ」
メイゲツが目でセイフウに訴えた。
「うーん、オレもそれには賛成だけど、あの妙なバグが気になるなぁ。なんか呪われそうな気がする」
セイフウが視線をオレに向け、そう言い放つ。
保険ですか? もしもの時の保険ですか?
「でもセイフウにもいいかもしれんぞ?」
別に喧嘩する気はないが、売り言葉に買い言葉だ。
「どういうことですか?」
「ほら攻撃するとマヒ効果を与えられるから、猟にいい」
あぁなるほどと、セイフウは納得した表情で手を叩いた。
「でもオレもシャミセンさんがいいと思います」
頑固だねぇ。まぁもらえるならもらうけどさ。
さて、その[玉龍の髪飾り]を装備すると、LUKが20増えるわけだから、合計が205になって、その30%……61がVITに増加する。
ということは、70だから――HPの最大値は840になる。
ついでに言うとINTの合計値は100だから、MPの最大値は1150……
なんかすごいことになってる。
[紫雲の法衣]のもうひとつの効果である、モンスターからの魔法効果を無効化できる確率は60%超えになった。
[64:24]
クエストの残り時間を確認してみると、開始してから十時間近く経とうとしていた。
「そういえばなにも食べていませんでしたね」
メイゲツの言葉で、オレとセイフウのお腹が鳴った。
それに気付いてか、それとも気付かないふりか、メイゲツはアイテム欄からランチボックスとシートを取り出し、シートを床に敷くと、ランチボックスをひろげた。
「シャミセンさんの分もありますよ」
何故に? と思ったら作り過ぎたらしい。
ゲームの中で料理ができるというのは、前の、隠しダンジョンでのバカンスで知ったが、重箱はちょっとやり過ぎじゃないかね?
とりあえずボス部屋を見渡したが、セーフスポットらしく、モンスターの出現もなさそうだ。
……だいたい一時間くらいで食事を済ませた。
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