第38話・空撮理論とのこと



 オレは、はじまりの町にある宿屋のベッドの上に寝転がり、自分のてのひらを見つめていた。ステータスを見たが、デスペナは喰らっていない。

 あの時、キュウトウダバから逃れようと、崖の出っ張りから、双子とともに落ちた。

 最後に水が叩きつけられる音を聞いて、気をうしなった。

 そこまではなんとなく覚えていた。

 気をうしなうと、画面が真っ暗になって、目を覚ますまではなにもできなくなるようだ。



「……失敗したかなぁ」


 さいわい、ステータスを見るとレッド・ネームにはなっていなかった。……かわりに足が骨折してますけどね。

 おそらく、セイエイやハウルたちが川に落ちたオレたちを発見して、宿屋まで運んでくれたのだろう。

 ただ、双子はどちらも生きてギルドハウスに戻ったと、ナツカからメッセージをもらっているそうだ。

 もしかすると、無意識に右手をかざして、[土毒蛾の指環]の力で、背中に背負っていたセイフウが地面に激突するギリギリのところで浮くことができた。

 で、全回復していたのが功を奏したのか、あまり痛みを感じないところで気を失った。

 ……といったところだろうか。


「スクショ撮っとけばよかったな」


 そこが残念だった。

 もしかしたら、セイエイたちが一度戦ったことのあるモンスターだったかもしれないからだ。


「それにしても、なんであんなのがあそこに?」


 プレイヤーがレベル10以上にならないかぎり入ることのできないフィールドで、これまで経験値稼ぎに何回か探索したことはあったが、最高でもモンスターのレベルは17くらいだったので、20に達しているモンスターはいなかった。

 そこはきちんとゲームバランスを考えてのことだろう。

 ボス扱いとなるモンスターは、まず挑戦するかどうかを問いかける石盤がダンジョンの奥地にある。それに触れ、クエストに挑戦することでボスモンスターと戦う。

 つまり、レベル30にもなるモンスターが、ただのフィールドに出てくるとは考えられない。考えられるとしたら、山頂など、さらに上のレベルでないと入れない場所だ。


「オレもそろそろログアウトしようかな。…………」


 骨折による部位破損はだいたい六時間で回復するとのこと。

 大学とバイトが終わるのは、だいたい夜十時あたりだから、今日はほとんどプレイできない。

 双子とも会って話をしたいが、時間的にも多分会えないだろうな。


「いちおうメッセージだけは送っておこう」


 メイゲツとセイフウ、それぞれに『助けられなくてごめん』とメッセージを送り、静かにログアウトした。



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 【コンバート】攻略前線スレPart21【すんだ?】



 171 アーマン

 このゲームって、バランスどうなってるんだ?



 172 スティーヴンス

 >>171

 どげんしたと?



 173 アーマン

 >>172

 魔光鳥っていうやつがドロップする肉が高値で取引されるって話題になっているみたいだから、手に入れようと生息してるっていう裏山のレベル10制限のところに行ったんだけど、見たことない大怪鳥に一撃で殺された。



 174 ロバーツ

 171のレベルってどれくらい?



 175 アーマン

 >>174

 25くらい。ちょっとINTよりの戦士職。

 そのモンスターがいきなり出てきて、気付いたらいきなり攻撃されてた。あまりに一瞬過ぎてなにがなんだか。

 しかも初手がかなり強力。弱いVITだと一撃で死ぬ。オレがその証拠だ。



 176 フレディ

 モンスターの詳細は? あ、いや初手で死んだんだったな。



 177 アーマン

 とりあえず図鑑には簡単な資料が登録されてたから、ちょっと見たことあるってやつ、対策方法教えてくれ。あんなのがザコだったらこのゲームおかしいぞ。



 [キュウトウダバ]Lv30 属性火・陰



 HPとMPはわからん。



 178 デブラ

 >>177

 \(^o^)/



 179 アレクサンドラ

 >>177

 ちょっと待て、山頂付近だったらまだわかるが、そんなのがレベル10から入れるフィールドにいて、プレイヤーが勝てるとでも?

 偶然遭遇した低レベルプレイヤーは即デスペナじゃないですか

 (´Д⊂グスン



 178 ヤロボロク

 そういえば、今日裏山で探索してたら、人が空飛んでた。

 ずっと見てたけど、だいたい一分以上は飛んでたぞ。

 【画像】



 179 ジャンピエロ

 >>178

 なんでこの人、空飛んでるの? そういう魔法があるの?



 180 マリカ

 魔法職だけど、そんな魔法があったら即覚えて空中散歩を満喫してるわよ。ついでに海も越えて向こうの島まで行ったりしたい。



 181 ホロパイネン

 多分時間制限あるから海超えは無理だろ。

 もしかしたら[土毒蛾の指環]による効果じゃないか?

 あれって、たしかLUKが高いほど飛べる時間長いらしい。



 182 ゲール

 >>181

 ほう、まるで持っているような言いっぷりだな。



 183 ホロパイネン

 >>182

 鍛冶スレの情報で知った。鍛冶材料の[夜光虫]もそうだけど、作れる人限られてるレア中のレアだ。コンチクショー(# ゜Д゜)



 184 ベルナデット

 >>181

 LUKが高い……あれ? なんか思い当たるプレイヤーが



 185 ジャンピエロ

 わたしもなんか一人だけ心当たりある



 186 ホロパイネン

 装備している法衣が違うけど、顔バレはしてるからなぁ。

 もしかして、第一回イベントで変な魔法使ったやつか?



 187 エルミ

 あの結界法術士?



 188 ベルナデット

 >>187

 でも今は魔法陣スキルが出てるから、先行とかで手に入れてたんじゃない?

 それより、その時パーティーになってた人たちのほうが人外な気がする。特にピンクのツインテールの子。まるでピンクの悪魔だった。



 189 デブラ

 そういえば、その人、昨日ギルド会館にあるローロさんの鍛冶屋の前で見かけた。

 なんか小学生くらいの女の子からからかわれてて笑った。



 190 テレサ

 >>189

 わたしもそこにいた。セクハラとか言っていたけど、なんかやったのかな?



 191 エルミ

 女の敵なのかな? でもフィールドでは一人がほとんどだけど、たまにすごいかわいい女の子とか、美人と一緒にいるところもみかける。しかも結構親しく話してたわよ。



 192 ままま

 そいつ、睡蓮の洞窟にあるギルドハウスは顔パスっぽい。

 まぁギルマスから許可証をもらっているんだろうけど。

 その時、ギルドハウスの近くで休んでたんだけど、なんか慌てた様子で中に駆け込んでた。



 193 アレフ

 その人の近くにいる女の子の名前調べようと思ったら、鑑定不可になってた。レベルが低いからプレイヤーキラーに狙われないようにしているのか、それとも強いプレイヤーだからなのか。

 なにはともあれ、リア充は氏ね。



 194 アーマン

 あれ? 話が化物から特定のプレイヤーの話になってる。



 195 ままま

 >>194

 いや忘れてるわけじゃないぞ。ただそれがザコレベルで出てくるとしたら、上級プレイヤーじゃないと太刀打ちできないだろう。

 オレレベル30だけど、対策方法がないとまず勝てる気がしない。

 しかも得意魔法の属性が木だからまず属性の問題でねぇ。



 196 テレサ

 >>193

 嫉妬は見苦しいわよ。それだけ慕われてるんだろうし。



 (中略)



 242 斑鳩

 やっとコンバート完了。魔獣演武の時にゲットしたテイムモンスターも一緒で嬉しい。やってた人またよろしく。



 243 笹鎌

 >>242 コンバート乙。



 243 アナレナ

 >>242

 おつかれ~~(・∀・)

 って、もしかして竜使いの斑鳩さん?

 あの可愛いくて鬼畜なちびちびちゃんは元気?



 244 タフィ

 マジか? オレたちのあこがれ斑鳩さん。

 龍神の咆哮にいつも助けられてたよ。



 245 斑鳩

 >>243,244

 でも装備品がほとんどない状態だ。あまり期待しないでくれ。

 多分装備品とかデータコンバートできなかったっぽい。

 代わりにちびちびに装備は必要ないから、今はちびちびに先制させて、とどめはオレって感じだな。のんびりやってみるよ。



 246 ままま

 オレもやってたけど、こっちはこっちで最初からやってるからなぁ。それにそんなに強くなかったし。



 247 斑鳩

 そういえば、魔狼の女の子もコンバートしたのかね?

 目撃した人いたら情報きぼんぬ。



 248 エヴァリーナ

 >>247 誰のこと?



 249 斑鳩

 >>248 たしかハウルとかいう子。



 250 ルルル

 ちょっと待って、その人もかなり有名なプレイヤーじゃなかったっけ?

 でも魔狼? 黒狐の間違いじゃ?



 251 斑鳩

 >>250

 あれ? オレの勘違い?



 252 ままま

 >>250

 もしかして赤ずきんみたいなやつ? そいつだったら今日見かけた。かなり苦戦してたけど、助けてもらってたみたいだぞ。



 253 斑鳩

 >>252

 そうそう、その子。もし見かけたら情報を頼む。

 またその子とパーティー組みたいんだよ。あの子のテイムモンスター、本気出したら怖いからな。オレも一回負けたことがある。



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