高齢化が深刻となった世界。70歳が人間としての「定年」。その年齢を迎えた人たちは……。続きは本編を読んでもらうとして。設定も面白いですが、メインで語られる、おばあさんのキャラが素晴らしい。社会制度としての面白さと並行して、おばあさんの人生の物語がある。人間が生きる意味とは何だろうかと、問いかけてくるような小説でした。
持久走も受験勉強も、時間が決められているから頑張れる。それが寿命にも言えるというのは、どうなのでしょうね。自ら決めた最期の時まで、全力で生き抜く幾子おばあちゃん。読み始めて10秒で、このおばあちゃんにハートを奪われました。やることなすこと全てがイカすおばあちゃんに、皆様会ってきてくださいませ。
気持ちがいいほど口の悪い婆さんの猛毒を含んだ語りで、『人間が人間として生きる事、人間が人間として死ぬ事』をサラッと書いた傑作。