第9話 「メガネの友達」 妖怪「なかまはずれ」登場
1
心の闇にとらわれて 出口の見えない人がいる
天狗の力の少年が 来たりてこれを焼き払う
てんぐ探偵只今参上 お前の心の悪を斬る
その日の、とんび野第四小学校五年二組の授業は、静かだった。内村先生は機嫌がよく、天気もうららかだった。シンイチはうっかり教科書を忘れてしまい、隣のススムに席をくっつけて、見せてもらっていた。ススムは「机をくっつける」という非日常にテンションが上がったのか、消しゴムを定規で刻みはじめ、賽の目切りにした。ひとつふたつと積み、上に積めとシンイチにうながす。シンイチは慎重に賽の目を積んだ。ススムはさらに慎重に次を積もうとしたが、バランスが悪かったのか二人の塔は崩れ落ちた。声を出さないようにススムは笑った。
「お前らちゃんと聞け」
すべては内村先生にばれていた。丸めた教科書で二人とも頭を叩かれ、仕方なくシンイチは授業に集中することにした。ふとススムに目をやり、シンイチはようやく彼の異変に気づいた。彼は、ノートを一文字も取っていない。
「目が悪くなってさ、黒板の文字が見えないんだよ」
休み時間にシンイチが問いつめると、ススムは白状した。
「それ誰かに言ったのかよ」
「……メガネってさ、格好悪いじゃん」
ススムは本音を言った。子供にとってメガネは苦痛だ。肉体的にも精神的にもだ。メガネをかけてるキャラには一定の侮蔑が入ることも、シンイチにはなんとなく分る。
「だからってさ」
「分ってるよ。だから親に言って、メガネをつくることになってる」
「なんだ。心配させんなよ」
「次の日曜、つきあってよ。メガネ選びに」
「なんで?」
「これカッケー、ってのなら、誰も文句言わないだろうと思って」
「オッケー!」
ススムは安心して笑った。
「シンイチが選ぶんなら、親が変なの選ぶより、全然いい」
シンイチは安心した。これまでのノートも、全部うつさせてあげることにした。
「この青いヤツが一番いいんじゃない?」
シンイチは選びに選んだ末、悩みに悩んだ末、「自分が一番カッケーと思うもの」をススムに薦めた。ススムのメガネデビューの責任が自分にもあると思うだけで、それは誇らしくも緊張することであった。
ススムはその青いフレームをかけてみた。シンイチは自慢げに聞いた。
「どうよ?」
「うん。なかなか渋い」とススムはポーズを決める。
「渋いんじゃなくて、カッケーだろ?」
「気に入ったってことだよ」
「ならそう言えよ!」
ススムのお母さんはお礼に、とデパートの屋上でソフトクリームを買ってくれた。
「これ、メガネマンとして覚えなきゃな」
メガネをズリ上げる仕草をしてススムは得意げに言った。
「今日はありがとうなシンイチ。大分向こうまで見える」
ススムはシンイチに礼を言って、真新しいメガネで真新しい風景を見た。
二人は、なるべく遠くを見ながらソフトクリームを舐めた。
「なんだよ。その青いメガネ」
ススムのメガネデビューの朝、まずは
「ホントだ。目立とうとでも思ってんのか? 微妙だぜ」
腰巾着の
「そんなことねえだろ。カッケーだろ!」
反論するススムに、公次は大吉の顔色を伺った。大吉にダサいかダサくないかなんてどうせ分らない。ただ一度言ったことを引っ込めるのは大吉の体面が悪い。公次はそう判断した。
「やっぱダサいね」と公次は言う。
「公次が言うんなら、ダセえな」と大吉が結論づけた。
周囲の皆がススムを見た。ススムはすっかり縮こまり、助け舟をシンイチに求めようとした。が、朝の苦手なシンイチはまだ来ていなかったのだ。それが不幸のはじまりだった。
ススムは俯いたまま席につき、それから顔を上げなかった。その後シンイチが無邪気に時間ぎりぎりに滑り込み、内村先生がやってきて授業ははじまった。
昼休み、サッカーをする男子たちの中、ススムはいつものように「パスパス!」とパスを要求する。しかし大吉も公次も、ボールをススムには寄こさなかった。シンイチはそれには気づかず、一人でクライフターンの練習をしていた。
「パスパス!」とススムが手を上げても、ボールを持った大吉は渡さず、「パス!」と手を上げた公次に流した。何度もだ。
こういうことは、サッカーではよくある。ススムは朝の件は朝の件、サッカーはサッカーだ、と思おうとした。
しかし次の朝、下駄箱にススムの上履きがなかった。ススムは一人で校内をさまよい、給食室の裏手のゴミ箱に突っ込んであるのを発見した。生ゴミと一緒に捨ててあり、手をつっこんで吐きそうになり涙が出てきた。
教室に入っても椅子がなかった。誰がやったんだと周りを見ても、誰も目を合わせようとしない。窓から外を見ると、校庭の花壇の中に上下さかさまに椅子がつっこんである。ススムは走って取りに行った。背中で皆の爆笑を聞いた。正直、朝の苦手なシンイチがこの場にいなくて良かったとススムは思った。シンイチには、こんなみっともないところを見せられない。
昼休み、一度もススムにパスは回ってこなかった。大吉や公次だけがパスを出さないのではない。誰もがだ。昼休み中、ススムは笑顔でただ走り回っていただけだ。
その後、二人のいないところで、ススムは何故パスを出さなかったのか聞いてみた。
「大吉にそうしろと言われたんだ。お前も『協定』に入れって」
山崎くんと渡辺くんが白状した。
「大吉に言われたから。『協定破り』はこわいことになるって」
自分は大吉の「標的になった」のだと、ススムは自覚した。すなわちそれは、いじめのはじまりである。だとすると選択肢はふたつしかない。克服するか、耐えるかだ。
正直、ススムはいじめが何故起こるのか分らない。魚の群れが弱った個体をいじめるという話を聞いて、それは動物の本能にプログラムされていることではないかと思う。何故いじめるのかを、いじめる奴らに問うても無駄だ。彼らは集団であり、個人の意志とか個性を持つ個体ではないと考えられる。彼らは「集団として」いじめをするのだ。魚の群れは、誰か一人の意志で標的を決めない。所詮「なんとなく」だ。波が来るようにいじめは来るだけだ。黙って耐えて、生きのびることしかススムには出来ない。先生に相談する? 親に相談する? シンイチに相談する? 無駄だ。見えないところで、より陰湿ないじめにエスカレートするだけだ。
ススムは昔、軽いいじめに遭ったことがある。そのときは一週間で終わった。向こうが飽きたのだ。その一週間は暗黒だった。どうしてこういうことになるか、まるで理解できなかった。今は少し賢くなった。いじめは、台風みたいなものだ。耐えてればそのうち通り過ぎる。
頭の回る公次が、女子にも根回しをしていた。
「『協定』に入れよ。何もしなければ協定に入ったとみなすから」
こうしてシンイチの気づかないうちに、ススムは密かに「協定」によって、いじめられる構造になった。
休み時間、シンイチとススムがしゃべっていて、シンイチはススムの腹に軽いツッコミのジャブを入れた。軽く触れただけなのにススムは顔を歪めた。
「いてえ」
「痛くねえだろ。お腹でも壊したのか?」
「ツッコミがきつかったんだよ」
実のところ、そこはきのう大吉に殴られた箇所だった。顔はバレるから腹を殴る。その程度の知恵は、子供にだってあるものだ。
放課後サッカーで、突然大吉と公次は帰ると言い出した。「そっかバイバイ」と何も知らないシンイチは手を振った。
「バイ」と公次は格好をつけたポーズをした。
「ススム」と大吉が呼んだ。
ススムはびくびくしながら二人のもとへ走っていった。
「もうやめるわ」
「えっ」
公次が言った。
「明日朝七時にさ、校庭で仲直りサッカーやるから来いよ」
「今度はパス出すよ」
ほうら見ろ。台風なんだ。耐えてれば晴れの日がやってくるのさ。ススムは自説の正しさに胸を張った。やつらが仲直りしたいんなら、堂々としてそれを受ければいいだけだ。
翌朝七時、誰も校庭には来なかった。
ウキウキして七時より少し前から待っていたススムは、これもいじめのひとつだと気づいて絶望した。
ススムは誰もいない、広い校庭で泣いた。
2
シンイチがススムのいじめに気づくまでは、シンイチが日直になる日まで待たなければならない。内村先生のところにプリントを届け、偶然校舎の裏を通りかかるまで、親友のシンイチにそれは隠されていたからだ。
みんながススムを囲んでいる。順番にススムの腹を殴っている。大吉と公次が、ニヤニヤしながらそれを眺めていた。
「もっと強く殴れよ」
大吉が言って、殴る人が嫌々強くススムの腹を叩いて、公次がけたけた笑う。それは陰湿で残忍な光景だった。
「おまえら何やってんだよ!」
シンイチは張り裂けんばかりに叫んだ。ススムは赤い涙目でシンイチを見た。ズレた青いメガネをずり上げた。メガネマンとして、まだ慣れていない仕草だった。
シンイチは大吉に詰め寄った。
「どうも最近ススムが変だと思ってたんだよ! いじめかよ! 何でこんなことやってんだよ!」
ススムが弱々しく言う。
「いいよシンイチ。俺を庇わなくていいよ。こいつら飽きたらやめるから」
「ススムも、何でオレに言ってくんねえんだよ! オレが何とか出来たかも知んねえだろ!」
いじめは台風だ。黙ってれば去る。原因なんてない。ススムがそう理解しようとしたのは、原因に触れたくなかったからかも知れない。
「……お前のせいだ」
ススムは、一番言いたくなかったことを言った。
「オレの?」
シンイチは何がなんだか分らなかった。
「お前のせいだ! 俺は、このメガネのせいでいじめられてるんだよ!」
それは地獄の底からふりしぼったような声だった。
「なんでだよ! オレが選んだメガネだろ! それがいじめの原因かよ!」
「お前あの日来なかったから知らないんだよ! ダセエって言われたんだよ!」
ススムは泣いた。シンイチはショックでうまく立ってられなかった。
ススムの赤い目がさらに赤い目になり、青いメガネがそれを大きく拡大した。
「オレの……せい?」
ススムの目を正視できず、思わずシンイチは目を伏せた。ススムを囲む子たちの影が砂利に落ちていた。その中に、妖怪の影があった。
「え?」
妖怪はその気配を感じたのか、すばやく宿主の口から体内へと姿を消した。影は重なり合っていたので、宿主が誰かは分らない。しかし影の形から正体は分った。
「妖怪『なかまはずれ』か!」
シンイチは右手の人差し指と中指で
「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 烈! 在! 前! 不動金縛り! エイ!」
校舎裏は、たちまち他の空間から切り離されて時を止めた。
「容疑者」は八人。大吉と公次は後ろでニヤニヤして見ていて、他の六人を殴らせていた。リーダーは大吉だ。
「大吉。どうせお前だろ。お前がいじめる標的を決めて、みんなを操ったんだろ」
背の高い大吉に詰め寄り、シンイチは下から睨んだ。だが、彼に妖怪が取り憑いているかどうかは外から分らない。
「もしもし」とシンイチは問うた。
「もしもし」と反射的に大吉は答えた。
「え? 嘘。違うの?」
意外だった。犯人は大吉だと、シンイチは勝手に決め込んでいたからだ。
「シンイチ……何やってるの?」
ススムがおそるおそる聞いた。シンイチは八人の容疑者を金縛りにかけることに必死なあまり、ススムを金縛りにしていなかったことに気づいた。「不動金縛りの術」あたりから、すべてを見られていたのだ。シンイチは観念し、ススムに説明した。
「……ススムをいじめたのは、妖怪『なかまはずれ』なんだ」
「はあ?」
「ススムをいじめてたのは、こいつらの本心じゃない。それは、妖怪のせいなんだ」
ススムには、意味が分からなくもない。「台風」のことを、シンイチは妖怪と言っているようだ。
「だからこいつらが憎いかも知れないけど、嫌いになっちゃ駄目だ。それじゃなかまはずれの連鎖が広がるだけだ」
「お前、……なんなの?」
「オレは皆に黙って妖怪退治をしている、てんぐ探偵だ」
「……はい?」
「妖怪は、同じ事を繰り返して言うことが出来ないって知ってる? 電話で『もしもし』って言うのは、電話のむこうが妖怪じゃないって確かめるためなんだぜ? 相手も『もしもし』って繰り返せたら、お互い人間と確認できたってこと」
「いま大吉は、『もしもし』って返したぜ」
「うん。だからいじめの犯人は大吉じゃない。誰かの口車に乗せられてただけだ」
シンイチは隣の公次に向かって「もしもし」と問うた。しかし公次は何も答えない。シンイチは考え、「バイバイ」と言ってみた。
「バイ」と、公次は答えた。それは最近の公次の、カッコつけの口癖だと誰もが知っていた。
「パスパス!」とシンイチは問うた。
「パス!」と公次は答えた。
ススムとシンイチは、サッカーのとき、公次が「パス!」としか言ってなかったことを、同時に思い出した。
「目立つ大吉を避けて、影に隠れた奴ならバレないとでも思ったのかよ!」
観念したのか、公次の口の中から妖怪「なかまはずれ」が出てきてニヤリと笑った。派手なオレンジ色で、横に歪んだ顔に虚ろな紫色の目をしていた。そいつは公次から離れたかと思うと、すばやい動きで逃げ去りシンイチの結界を破った。早九字は、術の完成が早い分結界の弱さが欠点だ。
シンイチは追った。ススムもあとを追った。
3
教室では、二組の皆がざわざわとしゃべっていた。「なかまはずれ」はその群れに飛び込み、集団の中の誰かの口に入った。またも誰か分らなかった。
「ちくしょう!」
シンイチは今度こそ九字を本式で切った。
「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 烈! 在! 前! 不動金縛りの術! エイ!」
ざわざわしたクラス中が、ゆっくりと時を止めた。
「オイ妖怪『なかまはずれ』! 観念しろよ! 一人ひとりまた聞いて回ればいいだけの話だ! 結界をちょっとずつ狭めていくぞ!」
集団の中の誰かの声で、妖怪「なかまはずれ」が言った。子供ならぬおそろしげな声だった。
「やってみろよ。先にこの子供の養分をしわしわになるまで吸い取ってやる」
どうやって倒す? どうやって肉体から外に出す? シンイチは必死に考え、「なかまはずれ」を挑発した。
「『なかまはずれ』って言う割にさ、なんでおまえ一人なんだよ?」
「なんだと?」
「おまえこそ、仲間いなんじゃないの?」
「いるわ! いるとも!」
「じゃ、呼んでみろよ」
「呼んでやるよ!」
超音波のような音が響きわたった。たちまち周囲に、派手なオレンジ色の歪んだ顔、妖怪「なかまはずれ」が現れ、びっしりと結界のバリヤーを覆いつくした。境界面に触れるたびにそれは火花を立てた。その瞬間だけはススムにも見えるのだろう。「何だあれ!」とススムはびっくりしていた。
「妖怪だ。あいつらのせいで、公次はおかしくなったんだ」
シンイチはつらぬく力で、不動の結界に妖怪が通れるほどの穴をひとつあけた。堰を切って沢山の「なかまはずれ」が結界内に入ってきて、クラス全員に取り憑いた。
ここまではシンイチの作戦通りだ。シンイチは咳払いをひとつして、自分を落ち着かせた。
「お前たち、『なかまはずれ』なんだよね?」
全員が同じ調子の声で答えた。
「そうだ」
「でもさ。おかしいよ」
「何がだ」
「クラスのうち、半分は女じゃん。その時点で仲間じゃないじゃん?」
「は?」
「男グループを見てみろよ。中村んちはお米屋さんで、江古田んちはサラリーマンだよね。そもそも中村は巨人ファンで江古田は阪神ファンだ。仲間じゃないじゃん」
「なんだと?」
中村くんと江古田くんが同時に反応した。
「相沢は甘いもの好きで、木崎はキムチ大好き。仲間じゃないじゃん。渡辺と山崎は黄色のシャツで一見仲間だけど、渡辺は足が速くて山崎は遅くて、やっぱり仲間じゃない。加藤なんか親が外人だし、瀬尾は転校生だ。大沢は超面白いこと言うお笑い芸人だけど、沼部はちっともダジャレが上手くない」
「それは、皆の違うところを一々あげてるだけだろうが!」
「そうだよ。皆が違う」
「だから何だ!」
「仲間はずれってのは、みんな一緒で一人だけ違う奴を排除することだ。『なかまはずれ』。お前の仲間なんてどこにもいない。ここにいるのは、『みんな違う奴』ばかりだ」
「うおおおお」
皆が苦しみ始めた。
「俺たちは一人ぼっちなのかあああああ」
全員の口から、妖怪「なかまはずれ」が出てきた。
「ねじる力!」
シンイチは左手の掌をつきだし、空間をねじった。左手から「矢印」が飛び出て、空間にぐるぐると巻きつき、竜巻を作り出した。妖怪「なかまはずれ」たちは、ねじられた竜巻に流されたように巻き込まれ、洗濯機の中の洗濯物のようにぐるぐる回った。
「つらぬく力!」
シンイチは右手から「矢印」を出した。それは槍のように「なかまはずれ」にぶすりぶすりと刺さり、空中に固定した。
シンイチは天狗の面を被ると天狗の力が増幅する、てんぐ探偵である。
「火の剣! 小鴉!」
朱鞘から抜かれた黒い短剣、小鴉から火炎が噴き上がった。魔を浄化する火の力。それが天狗の力だ。
「たあ!」
天狗面の少年は宙に舞った。その炎の軌跡は教室大の竜巻を描き、「なかまはずれ」を真っ二つにして焼いた。
「一刀両断! ドントハレ!」
ススムに、シンイチは自分の正体を明かした。妖怪「心の闇」退治を使命とする、天狗の弟子「てんぐ探偵」だということを。妖怪そのものはススムは見ていないが、火の剣が何かを斬った所は見た。結界に張りついた「顔」も見た。なにより、その後いじめの台風が嘘みたいに去ったことが、ススムを信用させた。
次の朝、大吉がなんとススムと同じ、青いフレームのメガネをかけてきた。
「ハア?」
びっくりしたススムに、大吉は本心を明かした。
「オレさ、カッケーって実は思ってたんだよ。だから買ってもらったんだけどさ、オレ目悪くないから、実はこれ伊達メガネなんだよね」
「なんだよ! ファッションかよ!」
ススムはあきれた。公次が言った。
「オレもホントはカッケーと思っててさ。オレも買ってもらおうかな」
思わずシンイチは突っ込んだ。
「キャラが被りすぎるだろ! 三人メガネキャラかよ!」
皆は笑った。大吉がメガネを扱いにくそうにして言った。
「それにこれ、すぐずり落ちてくるし」
「まあな。メガネマンの宿命だよなこれ」
ススムは自分のメガネを自慢げにクイッと上げた。もう堂に入った仕草だった。
「よし! サッカーやろうぜ!」と、シンイチはグランドへ走り出した。
いじめは妖怪のせいであって、公次のせいじゃない。悪いのは妖怪であって、公次じゃない。だから皆で前と同じようにサッカーをやろうぜ。シンイチはそうススムに言っていた。
伊達メガネを落としそうになった大吉の隙をついて、ススムは素早くボールを奪った。
公次は大声で、「パスパス!」とパスを要求した。
ススムは全力で、人間の公次にパスを出した。
台風が去ったあとのような、青い空だった。
てんぐ探偵只今参上
次は何処の暗闇か
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