最終章 退廃しt;.[t0\`/g,a*+x小夜#&);流s{|星p%......
第43話 魔界繋留基地
魔族によって中東に建設された、人間界と魔界を繋ぐ巨大な門。
魔界繋留基地。
どこまでも広がる荒野。
そこに禍々しい光を放つその施設がある。街灯もなく暗い地表で、そこだけが不気味に輝いていた。
乱立する巨大な塔。
魔力を生み出す、観覧車のようなジェネレーター。工業地帯のように、建造物のあちこちで紫の光が点滅する。
警備するのは何千体もの魔族たち。
死神、
彼らは夜空を見上げ、眺めていた。
繋留基地へ向かってくる紫の流星を。
紫光とともに下級魔族たちに向けて殺意を発するそれは、高度数千メートルから急降下を始める。雲の膜を突き破り、一気に地表近くまで接近した。
「ここが魔界繋留基地ね」
魔族たちの目に、私の姿はおぞましい化け物のように映っていたことだろう。
黒曜石のような
純白だった魔法少女の衣は、今や全て漆黒に染まっている。
白かった髪までも黒くなった。
もう、あの頃の姿には戻れない。
「それでも、今の私にはしなくちゃいけないことがある」
魔族を退け、人類を救う。
その達成のために、私は多くの犠牲を払ってきた。
自分の家族。
魔法少女の仲間。
守り切れなかった民間人。
そして、私の体。
「グオオオオオッ!」
死神たちが咆哮を上げた。私を殺すため、爪を振り上げながらこちらへ迫ってくる。何千体もの死神が荒野を駆け、砂埃が高く舞い上がった。
「もう、自分を傷付けた連中に従わなくていいんだよ?」
死神たちは元々人間だ。魔族として戦闘員になることを強いられ、家族や友人を傷付ける運命を背負ってしまった。
そんな死神に私ができることは殺すことしかない。これ以上、魔族に言いなりになって誰かを傷付けないように。
「剣よ……」
私は自分の魔法を発動させた。数万本もの剣を召喚する。
そこにあったのは、以前のような光り輝く白い剣ではない。
自分の魔法である光剣すらも、黒く染まっている。
ありったけの剣を召喚して、私はそれらを魔族の群れに向かわせた。私のコントロールに従って、次々と魔族に突き刺さっていく。バタバタと倒れていく死神たち。蠢いていた黒い大地はその活動を止め、沈静化する。
「キュオオオオオオオン!」
突如、甲高い鳴き声が響き渡った。
暗闇の中で輝く何個ものエメラルド色の光が、死神の死体を乗り越えて私の方へ接近してくる。
あの光は
「あの盾、
盾に施された特殊なコーティングが先程の光剣を弾き、凶刃の豪雨の中を生き延びたのだろう。あの盾は魔法を完全に無効化する。魔法少女にとっては相性の悪い相手だ。
だが、今の私は魔法少女ではない。
魔族だ。
「行きなさい」
私が背中にある
魔族となり、
強大な力で人類を殲滅してきた彼らが、逆に自分たちの作り出した強大な力で殲滅されるなんて随分と皮肉な結果だ。
私は葬った彼らの上を飛翔し、その先にある魔界繋留基地へ向かった。
「もうこれで終わりにしましょう」
私の目の前には、天まで届きそうなほどの巨大な紫の塔。
あの中に魔界繋留門が建設されているはずだ。
私は繋留基地内部に侵入するため、塔の地表近くにある玄関らしき穴へと接近した。
そのとき――
ドオオオオオン!
塔の中腹で突然爆発が発生。水晶のような外壁が私の元へと落下してくる。
おそらく、これは罠だ。私が基地へ近づいた瞬間に瓦礫で押し潰すつもりなのだろう。
ビルほどの大きさを持つ巨大な瓦礫が何個も降り、私はそれを避けることを強いられた。
「玄関口を塞がれた?」
砂煙が及ばない場所へ避難した私は、これから入る予定だった塔の穴を見つめた。そこには瓦礫が山となって連なり、その穴を中に隠している。
敵も易々と重要拠点を落とさせてはくれないようだ。別の侵入経路を模索する必要があるだろう。
私は塔の中腹を見上げた。
爆発で瓦礫が吹き飛んだ辺り。
そこに自分を罠で殺そうとした魔族がいるはずだ。
そのとき、私は不意に殺気を感じた。
「何なの、この気配は?」
強大な殺気を放つ何か。
それが中腹に開いた穴に立ち、私のことをじっと見つめていた。
「黒い……巨人?」
全身を黒い甲殻に覆われた人型の魔族。
紫の光を放つ半透明の羽。
他の魔族のように筋肉質な体格ではなく、スラっとしたボディライン。表面が滑らかな甲殻で、どこか女性らしさを漂わせる。
その魔族は私へ手を向け、何かを念じているようだった。
「『皇蜂の紋章』が効かない……か。あなた、何者なの?」
「それはこっちの台詞よ」
「あら、あなた、魔族のくせに私のことを知らないの?」
女性らしい話し方。なかなか人間とコミュニケーションを行う魔族はいないので、こういう個体もいるのかと少し驚いた。
魔族の間では高い身分なのだろうか。
「私は
「初耳ね」
「あらら、私の名前も実際にはあまり知れ渡ってないということかしら」
いかにも「お姉さん」という感じの優しい雰囲気の喋りとは逆に、禍禍しい殺気は勢いを増していく。
この勢いに圧されたら負けだ。どうにか平静を装い、蟻兵の質問に答えた。
「さ、私の自己紹介は済んだわ。次はあなたの番よ」
「
「日本人の名前ね。それで、あなたがこの繋留基地へ来た目的は?」
「あなたたち魔族を倒して、人間を蹂躙から救うこと」
敵に物怖じする必要はない。相手の放つプレッシャーからして、もう戦闘は避けられないのだ。
「そう、それじゃあ、あなたは私の敵ね」
次の瞬間――
「私、あなたを倒すわ」
私の視界のずっと先にいたはずの蟻兵は、いつの間にかすぐ背後にいた。
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