ショー・マスト・ゴー・オン――PART5
――北海道の一部と千葉は滅び、ゾンビの汁まみれになった私は、四次元大魔王との対峙をしているが、芝居の幕は上がり続けている。
舞台はそろそろ終わりに近づいたころだった。
ゴオオオオ、私は劇場を飲み込もうとする四次元大魔王に抗いながら、舞台上の役者たちを見つめていた。芝居が終わりに近づくとき、我々は長年の友との別れのような、そんな胸が引き裂かれるような気持ちを味わう。
この芝居は「劇団
だからこそ、舞台監督である私は、この芝居の幕を最後まで上げ続けなければいけないのだ――。
「ハッハッハ、たかが人間ごときが、この四次元大魔王様に逆らうなど、笑止千万! すべてを一呑みにしてくれるわ!」
ダイソンよりも強い吸引力で、四次元大魔王がその真っ赤な口を開く。その口の中に、劇場の壁が、椅子が、そしてお客さんたちが次々と吸い込まれていく。役者たちは芝居を続けてはいるが、踏ん張っているのがやっとのようだ。
「くそっ、どうしたらいいんだ!」
私はこぶしを握りしめ――はっとあることに気づき、オペ室を飛び出した。
「
オペレーターが慌てた声を上げる。
「オペ室は任せた! 私はあいつを止めに行く!」
私はそう言い残すと、舞台袖へ走った。
そこには、幕がある。この芝居が始まったときに上がり、終わったときに下ろす幕だ。私はその巨大な幕を外すと、四次元大魔王めがけて放った。
「ハッハッハ……むぐっ、むがっ、もごっ、な、何だこれは……い、息が……!」
四次元大魔王が苦しみの声を上げる。
どんなに強い吸引力を持つ掃除機でも、カーテンや布系のものを吸い込むと自動的に止まってしまう――私は長い舞台監督経験から、そのことを知っていたのだ。
「うっ、ま、まさかっ、四次元大魔王ともあろう者が、に、人間に負ける……など……!」
スゥゥゥゥゥン。ダイソンが止まるような音を立て、四次元大魔王は徐々に小さくなり――そして、消えた。
空間は元通りにふさがれ、オペ室の二人が、私に向かって親指を立てる。私もそれに応え、舞台袖でゆっくりとうなずいた。
The show must go on――四次元大魔王に勝利した私たちの芝居は、このまま最後まで幕が下りることはないのだ――――
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