夢の国へご招待

「おめでとうございまぁぁす!」


 そのドアが開くと、僕たちはそれぞれに考えたポーズを決め、精一杯の笑顔で叫んだ。


「小島千絵さんですね? 先日、応募されました、『赤ハム主催・食べて当てよう・夢の国ご招待キャンペーン!』ですが、厳正な抽選の結果、見事、小島さんが当選されました! 本当におめでとうございまぁす!」

「おめでとうございまぁぁぁぁす!」


 仲間たちが僕に復唱する。徹夜で用意した色とりどりの紙吹雪が小島さんを包む。ドンドンパフパフ、楽器の賑やかしも忘れない。


 何だ、どうしたんだ、音を聞きつけた近所の人たちが好奇心丸出しの顔で出てくるが、そんなことは気に留めていられない。赤ふんどし一丁の格好にも慣れた。


 なぜなら、僕たちは喜びの使者団。宝くじにTOTOに懸賞応募――それらに当選した人たちを祝いたい、その一心で大学時代の仲間たちと立ち上げた集団なのだ。


 いまはまだ、赤ハム株式会社との契約しか取れていないけれど、いつかは日本中の企業と契約し、すべての当選した人々を祝うのが僕たちの夢だ。


「さあ、これをどうぞ」

 笑顔でチケットを差し出した僕に、


「……あの、こういうの迷惑なんですけど」

 しかし小島さんはそう言うと、ぴしゃりとドアを閉めた。


「あの! 小島さん、チケット!」

 慌てた僕たちに、彼女は、


「いらないです! そんなのいらないから、早く帰って下さい! そのゴミも片付けて!」

「はい……すいませんでした」


 さっきまでの元気はどこへやら、僕たちはしょげかると、落ちた紙吹雪を一枚ずつ拾った。


 その夜の反省会では、やっぱりお祝い気分には、紅白帽子と鼻眼鏡は必須なんじゃないかという意見が出された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

新規ユーザー登録無料