ギネスに挑戦

「流しそうめんか……」

「ああ、流しそうめん」

「流しそうめんにするか」

「ま、妥当なとこだろう」

「何メートルにするかが問題だな」

「ああ、問題だ」

「いまの記録は?」

「3328.38メートル……3.3キロってとこか」

「長いな」

「思ったよりも長い」

「国道、大丈夫か?」

「農道を使えばいけるだろ」

「その発想はなかった」

「で、何メートル伸ばす?」

「前回と前々回の差は?」

「えーと、100メートルくらいかな」

「じゃ、うちも100メートルでいくか?」

「妥当なところだな」

「うん、100メートルくらいじゃないと、次に記録更新する人が大変だしな」

「いや、待て」

「何だ?」

「前々回とその前の差が――600メートルだ」

「マジか?」

「うそだろ」

「それはちょっと空気読まなさすぎだろ。600メートルって」

「600はキツいな」

「ああ、自分たちのことしか考えてない」

「ちなみに、かましたのは京都だ」

「京都か……」

「たしかに空気とか読まなそうだな……」

「ちなみに、抜かれたのはどこだ?」

「鳥取。しかも一年後に」

「うわ、鳥取かわいそう」

「せめて三年は待つべきだろ」

「だよな、これは訴えていいレベル」

「どこに訴えるんだよ」

「ギネス協会とか?」

「そんなの、取り合ってもらえないに決まってるだろ」

「でもさあ、あとにやる人のことも考えて欲しいよな」

「流しそうめんなんか、日本でしかやらないわけだし」

「地方都市にとってはネームバリューが上がる大チャンスだからな」

「次にやる地域の迷惑も考えないと」

「だから、せめて100メートルだよな」

「だな。……ってことは、うちも100メートルでいいのか?」

「うん、そうしよう。前回から三年でちょうどいい頃合いだし」



 その夏、某県某所で流しそうめんの世界記録が、きっかり100メートル更新された。スタートからゴールまで、そうめんが流される時間は約一時間半。ふやけて千切れた麺の欠片を笑顔ですくい上げた子供の笑顔がニュースで大きく報じられる。


 誰が始めたか、ギネスブック。こうして今日も、記録は粛々と伸ばされていくのである――

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