勇者Lv.3

「あ、お前がレベル3の勇者かぁ?」


 バカ丸出しの口調で言われて、僕はついカチンときた。振り返ると、「勇者リーダー」を筆頭とした五人組。魔法使いに僧侶、盗賊に剣士と、なかなかバランスの良さそうなパーティーだ。


「勇者がレベル3とか……俺? 俺はレベル55だよ! どうだ、参ったか!」


 男がふんぞり返る。ここはとある村の酒場。周りのやつらもバカ揃いらしく、くすくすと僕らを見て笑っている。


 あー、いるんだよね、こういうわかってないやつ。


 ホントはこういうのに関わってもいいことなんてないんだけど、たまにはそのバカさ加減を思い知らせてやるのもいいかもしれない。僕は仲間に指示を出した。


「……リーナさん、氷の魔法ブリザード!」

「はいっ」


 瞬時に、魔法使いの彼女が奴らのパーティーを凍らせる。そこへすかさず、


「ゴードンさん、渾身の一撃!」

「はいよおっ!」


 モンクの彼の重量級パンチが、氷の彫像と化した「レベル55の勇者」をバラバラに砕く。そして、僧侶の彼に、


「ティノくん、死の呪文デススペル!」

「はいっ――」


 と、そこで、一歩も動けなくなっていた彼の仲間たちが、がばっと床に土下座した。


「すっ、すいません! そこまでは勘弁して下さい!」


 死の呪文デススペルを受けた者は、教会に連れて行っても決して生き返ることがない。彼らもそれをよく知っているのだろう。


「すいませんでした! この通りです!」

「……仕方ないな。ティノくん、もういいよ」


 僕は彼に呪文の中断を命じる。それから、


「レベルだけで人を判断するなよ」


 そう言い置いて、酒場を出る。僕の後ろから仲間たちもついてくる。


「ありがとう、ごめんな、こんなことで力を使わせて」


 一応、謝っておくと、


「そんな、あちらが無礼なんですわ」

「そうだ、ああいうやつには鉄拳制裁だな」

「ボクも呪文発動させても良かったんですけどねえ」


 仲間たちは答える。


「いや、そうはいってもさ。ホントにありがとう。いつも感謝してるよ。今夜は少し早めに宿を目指そうか」


 そう言うと、皆は嬉しそうにうなずいた。


「礼を言うのはこっちのほうだぜ。あんたはいつでも俺たちのことを気遣ってくれるんだからな」


 ゴードンさんが言う。


「当たり前だよ」


 僕は言い――本当に当たり前のことだと胸の中でうなずいた。


 みんな勘違いしているが、勇者に必要なのは強さやレベルの高さじゃない。そんなものはいくらでも仲間に頼ればいい。


 なら、勇者に必要なものとは?


 それは人を使いこなす能力。強い仲間を惹きつけるリーダーシップ。それが勇者の条件なのだ。


「あ、宿が見えてきました」


 リーナさんが嬉しそうに言う。レベル3の僕は、空いている部屋を押さえるために、ダッシュで宿屋に駆け出した。

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