猫のモンちゃんは考えた
これは、東京のとあるマンション。後藤家で飼われている猫、モンの話である。
モンは、三毛の雌猫ではあったが、自分のことを人間だと思っていた。なぜなら、物心ついたときからモンは後藤家の一員であり、去年の冬、お母さんに赤ん坊が産まれたとき、「これでモンもお姉さんね」などと言ったからである。
モンは食事も家族と同じものを食べていたし、トイレも同じ場所にあった。マンション飼いのため、ほかの猫に会ったことはなかったし、鏡というものは理解していなかった。
そんなある日、後藤家にお客さんがやってきた。お母さんの友達の三沢さんである。三沢さんは手に小さなカゴを提げてきた。
「もし、ケンカするようならすぐにお暇するわ」
そう言って、カゴを床に置いた。中から出てきたのは四つ足の動物。三角の耳に長いしっぽ。それはモンと同じ猫に違いないのだが、自分のことを人間だと思っている彼女は、変な動物が来たなと思った。
「わあ、可愛い! なつっこいのね」
「ほら、こっちおいで」
「すごいふわふわだ!」
お母さんと子供たちが嬉しそうに動物を撫でる。と、お母さんがモンを見て笑った。
「見て、モン。猫ちゃんですよー、ユキちゃんって言うんだって」
ほう、この動物は「猫」というのか――モンは思った。そして同時に、こんなに可愛がってもらえるなんて、「猫」とはいい動物だな、と羨ましくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます