#012-第4話「寿司……だと……!?」

 そんなこんなで二時間が経過し、お昼時間に突入した。ん、勉強風景ですか? 端折はしょりますよ、解説することもないので。


 そして――お昼ごはんはなんと、寿司だった。


「お、お寿司ですかっ。しかも、昼間から!」


 素で驚く俺。部屋から出てきたリオ父は「ちょっと頑張った」と言いながら、出前で届けられた寿司桶をテーブルの上に運んできた。


「高校生に一人前ではちょっと足りないと思うから、カップラーメンでも焼きそば弁当でも何でも食べて良いよ」


 それに続いて、冴羅が茶碗蒸しを玄関から運んでくる。全部で六人前、ちょうど人数分だ。リオ母がお茶を入れてくれて、俺と中林さんは小さく頭を下げながらそれを受け取った。


 お寿司は、一時間近くかけてのんびりと消費された。家族との理想的な食事風景って、きっとこんななんだろうなと俺は思う。中林さんが一貫一貫を、とても上品に味わいながら食べていたのが印象的だった。


「ごちそうさまー」


 リオが茶碗蒸しを食べ終わり、両手を合わせた。中林さんは茶碗蒸しを恐る恐る口にしている。時々息を吹きかけているところを見るに、もしや猫舌なのではないかという疑惑が発生する。


 俺はというと、実はリオ母からマグロとイカを貰い受け、リオ父からは中トロを頂いていた。そう、中トロである。高校生的には贅沢過ぎる逸品を、俺は二貫も食べてしまったのだ。胃と舌が幸せである。実に幸せである。


「そういえば、家族で握り寿司食べたのは、小一が最後かも」


 と、思ったつもりが口に出ていた。俺以外の全員が、驚いたような表情で俺を見る。え、そんなに意外なことなんですか、これ。冴羅が驚いた表情を隠そうともせずに訊いてくる。


「それ、冬美先生が高校や大学受かった時も、お寿司出なかったって言ってる?」

「う、うん。えーと、ほとんど覚えてないけど、寿司じゃなくて、ケンタッキーかなんかだった気がする」


 そういえば、俺が高校合格した時は……姉が散らし寿司を作ってくれた気がする。


「そ、それもアリなのかもだけど」


 冴羅はお茶を飲みながら片眉を上げた。それをリオ母がたしなめる。


「それがハルくんの家の文化なんでしょ」

「まぁ、うちはあんまりそういうので緩急ない家なんで」


 俺は頭に手をやりながら言った。それに、そういうイベントの時は、大抵両親のどちらかは不在だった。盛り上がるはずもない。考えてみればかなり寂しい光景なような気もするが、鹿師村家が姿なのだと考えれば、やっぱり我が大鷹家はごく普通の家庭、というように解釈できるようにも思う。どうなんだろう。


「絵里さんのところは?」


 冴羅が中林さんを見ながら尋ねた。一瞬、リオの目が怖くなったが、冴羅は気付いていないようだった。

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