#010-第6話「ロリ神様からの提案」

 月に叢雲むらくも、花に風――?


好事こうじ魔多し、とも同じ意味じゃ。良いことにはとかく邪魔が入るものじゃから、なかなか思い通りにはならんものじゃ、という意味じゃな」


 へえ……。良い事には邪魔が入る、か。


「それはそうと、ロリ神様」

ツクヨミじゃ」

「ああ、そうでした、ロリ神様」

「……お主、わらわに喧嘩を売っておるのか?」

「いいえ、ちょっと空腹になってきたので、食事でもと」

「おぉ、そうか。妾の事は気にしなくて良いぞ」


 と言いつつ、ロリ神様は俺のノートPCをものほしそうに見つめていた。


「ダメです。このPCは使わせませんよ」

「けちー。ハルくんのけちー」

「……はぁ」


 喚いているロリ神様を置いて、俺は部屋を出……ようとしたら、ロリ神様が慌ててついてきた。


「置いてかれては寂しいのじゃ」

「なにゆえいきなりロリっぽい言動に」

「萌えたか? 萌えたのか?」

「いいえ」


 即答してやる。何を研究してるんだ、このロリ神様は。


「うう、父上は嘘ばっかりなのじゃ……」

「もう信じるのめた方がいいっすよ、父君のことは」

「さすがにもう怒ったのじゃ。イザナギのばーか」


 ぷんすかと怒りながら居間までついてくるロリ神様である。しかし、その怒り方になんだか腹が立つ。どうやら俺とこのロリ神様は、性質の根本からして、どこかりが合わないらしい。


「そんなことを言われては寂しいのじゃ……」

「勝手に心の中を覗くのやめてもらっていいですか?」

「聞こえるのじゃから仕方ないじゃろう」


 ロリ神様は頬を膨らませて抗議した。俺は何度目かの「イラっ」を心の中に顕現させてから、テーブルの上に視線を移した。


 テーブルの上の料理――何ていう名前かは分からないが、梅シソと鶏ささみを使ったカツレツ風な何かだ――をレンジに放り込み、炊飯器からご飯をよそう。ロリ神様はその一挙手一投足を興味深げに観察してくる。少々ウザい。


「うぅ、ハルくん、さっきから心の声が痛いのじゃ……」

「心の耳栓でもすると良いです」

「うううっ……」


 レンジがピーピーと鳴って、温めが終わった事をおしらせしてくる。テーブルの上に皿を移動し、鍋の中のコンソメスープ(冷たいのが好みだ)をカップに入れて、いざ「いただきます」。


「それで」


 俺はささみに箸を伸ばしつつ、正面に座っているロリ神様を見た。


「何の用です?」

「おお、そうじゃった」


 ロリ神様は、俺の食事風景を目を皿のようにして見ていた。ぶっちゃけ食べにくいです。


「今宵はの、お主に確認したいことがあっての」

「確認?」

「そうじゃ。お主が愚兄の選んだパートナーと子作りすることは既定事項と――」

「いやいや、何も決まってませんし、そのつもりもありませんから」

「ううむ、チェックが厳しいのじゃ」

「先を続けてください」


 その間にささみを口に入れて、仄かな梅とシソの香りを味わってみる。うめぇ。うめぇよ姉ちゃん。


「今、お主の頭には、月夜の晩には必ずウサミミが生えるようになっておる」

「あなたがそうしたんですよね」

「そうじゃ。じゃが、満月の日以外は、お主とお主の姉以外には見えぬウサミミじゃ」

「そうみたいですね」


 ご飯を一口。姉のあの手で研がれた米かと思うと、これも美味い。俺は幸せだなぁなんて思う。米の品種なんて知らないけど、北海道米なのは確かだ。だが、そんなことはどうでもいい。姉が研いでくれたという事実だけで、俺は美味いと思える男だ。


「ハルくん? 米の話はどうでもいいのじゃが?」

「ああ、すんません。続きをどーぞ」

 

 もぐもぐしながら、俺はロリ神様を促した。ロリ神様は「うむ」と釈然としないおもちながらも、話を続けた。


「それをだな、お主の恋人にも見えるように拡張してはどうか、という提案なのじゃ」


 リオに……?


 俺の眉間には、縦皺が寄っていたと思う。

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