#007-第4話「二回目の告白をされて……」

「そーだっけ?」


 姉は俺の枕に顔を埋めて深呼吸をし始めた。


「ハルちゃんの頭の匂い~♡」

「やめい」

「いやん、ハルちゃん怖い♡」


 なにこのウザ可愛い女子大生。そして良く見ると、ボタンが掛け違えられたままだ。直ってない――!


「姉ちゃん、ボタン、まだ掛け違ってるよ」

「ふぇ?」


 くそぅ、いちいちリアクションが可愛いな、クソっ。


 理性、がんばれ。がんばれ、理性。がんばろう、理性。


 ひたすらお経のように唱える俺。


 そんな俺を尻目に、姉はパジャマを見下ろし、声を上げて笑った。


「ほんとだ。あははは、直したのに直ってない! あはははっ」


 姉は再びボタンを外し始める。


「あー、直さなくていいよ、もう~」


 俺は姉の手を掴んでそれを止め……ようとした所、逆に手を掴まれて、胸に押し付けられた。


 ん? 押し付けられましたよ?


 何がというと、俺の手が。


 何処にかというと、姉のおっぱいに。


 ――その瞬間、俺の理性防衛隊の第一陣が潰滅かいめつした。


 ふにっふにや!


 むっちゃ柔らけぇぇぇ!


 すげえ、人体の神秘。


 なにこれええええ!


 脳内で大興奮した俺だったが、ふと姉のえぐりこむような視線に気が付いて、急速に冷静に戻る。


「揉んだ?」

「……揉みました」

「あはっ、揉まれちゃったあ♡」


 き、今日は一段とウザ酔いですよ、お姉様。でも、掌に残ったおっぱいの感触は忘れるわけにはいかない。名前を付けて以下略。


 ……これ、リオには黙っておこう。


 俺は取り急ぎ深呼吸を二度行い、自分の右掌を見ながら訊いた。


「で、姉ちゃん。どうしたの、今日は」

「ふぅ……」


 いきなりシリアスな表情を浮べる姉である。俺はその落差ギャップにドキッとした。姉は静かに起き上がると、自分の隣をパンパンと叩いた。俺は無言でそこに移動し、腰を下ろす。ベッドの端に並ぶ俺と姉――いつもの光景である。


「今日ね、後輩の子に告白されたの」

「え?」


 ベッドが軋んだ。


「学部の三年生」


 姉はまたもたもたとパジャマのボタンを外した。その二つのよく整った形の膨らみが、パジャマの布地から零れ出そうになっていた。


「結構かっこいい子でね。考え方もしっかりしてるなぁって思っていた子で」


 姉の手がボタンをゆっくりと締めていく。白い胸とお腹が、少しずつ隠れていく。


「結婚を前提に付き合ってくださいって」


 心臓が急に痛くなった。「胸が痛い」ってこういうことかと、俺は幾分冷静に考えた。


「実は、二回目なんだ、その子に告白されたの」

「二回目……」

「一回目は先月の半ば。ハルちゃんたちの試験が終わった後だったよ」


 全然気付かなかった。


「一回目の時は、あたしなんかに惚れても何にも良い事ないよって断ったの。でも」


 姉は目を伏せた。


「今日は、本当に真剣に告白された。ううん、口説かれたというのが正しいかもしれない。それで、学部の皆と別れてから、二人で飲んだの」


 二人で……飲んだ……?


 一瞬、その言葉の意味がわからなかった。

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