第123話 多角的高次元反物質原素体 絶望因子
異世界転生者である人の死がもたらした
『MICHIRU、ゲートの開放条件についてキミと話したかったんだ』
「何か疑問があるのか?」
黙る阿部を他所に不死川は陽気に田島へと話しかける。会話を遮るものがなくなった不死川は意気揚々と、田島みちるは横にいる阿部の姿を見ないように不死川へと集中する。
『どうにも、最近のゲートの開き方は突発性が高い。そこらへんについて何か原因があるのかな?』
「お前の第八研究所の分野とは離れていることだ。お前の専門は生物学だったはずだが?」
『なぁーに、コチラも対応に追われるのは嫌いでね。ある程度、事前にネタがあれば頂きたいと思う次第ってところだよ』
不死川の不敵な笑みに田島は僅かに考えるが、いうことに筋が通っている。
「昨年と比べて、
『君が見つけた、
「お前の発言を訂正さしてもらう。私と――」
不死川の不用意な発言を嗜めるように田島は言葉を付け加える。
「櫻井京子が見つけた
それは田島みちるにとってのポリシー。一人の力ではない。
彼女と共にいた存在があればこその発見であると。
『変動することにより異世界ゲートを繋げることが解明された
「そうだ」
不死川は悲観的な言葉を吐きながらも、
『人類が救えなかった異世界、希望である勇者亡き世界、混沌が支配する奈落』
どこか笑みを浮かべて田島を見つめる。
『異世界を繋げるゲートが齎す、
不死川の笑みを受けて田島は微笑み返す。
「人類の希望を喰いつぶす絶望による侵略の架け橋といったところだ……」
生み出され続ける絶望。
『半永久的に減ることはなく、増加する度に新たな絶望を引き寄せる
「その通りだ……」
『世界が滅びるのが先か、生み出される絶望因子を食い止めることが先か』
「出来なければ滅びを待つだけだ」
『だから、キミが名付けた――』
田島との会話に気分を良くしていく不死川は不気味に微笑みを向ける。
『
その解釈が気に入っていると言わんばかりに田島へと愛を込めた視線を送る。
『絶望因子が生まれる度に別次元と別次元を繋げる重力変動及び次元歪曲が起こり空間次元接続でゲートを繋げ、どちらかの世界に終わりをもたらす』
「そう聞くと、まるで世界が選定されているようだな。生き残る世界に値するのか試されている、私達の世界が」
『MICHIRU、君がいるだけでこの世界に存在する価値はある』
不死川の真剣な表情に田島はため息をついて視線を逸らす。照れてるわけでもなく、こういう奴なのだと呆れた様子を浮かべる他ない。その反応を受けても不死川は動じない。
楽しそうに研究所のモニターを眺め、
『だが、まだその絶望は本領を発揮していない』
予言をする。
不死川の発言を受けて田島も同じように自分の研究所の中央モニターを眺め、
「その通りだな」
賛同した。火神と同じようにこのままでいくわけがないことを理解している。彼女たちの眼前にハッキリと絶望が大きな口を開けて、存在を誇示している。
「まだデカくなるぞ……コレは」
絶望を世界に繋げる
止まることなく現実世界で絶望の拡大を続けていく。
《つづく》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます