第199話 全身傷だらけの返ってきた我が子の目は白目をむいている
強は控室で一人美咲の料理を頬張る。
「うまい~」
そして高畑先生も血肉を分けた感覚で生み出したテストという我が子が愛されたことに感動しながら陽気な気分で教室に残っていた。涼宮強が早すぎたために後の生徒が続いてこないから、我が子の愛されっぽりを眺めることにして、
「あれ……?」
気づく。
「これッ!」
席を立ちあがる。我が子を握る手がぶるぶる震える。虐待だ。児童虐待に近いものだ。真剣に我が子の話を聞いてたように見えたオカマは、殴りガキまくっている。
「これも、これも、これも、これもぉおおおお!!」
一人残らずフルボッコである。怒り心頭だ。高畑が見ていた光景の事実が異なることがハッキリ判明していく。可愛がられた我が子に血を流したように紅いバツ印の傷がところ狭しと広がっていく。
全身傷だらけの返ってきた我が子の目は白目をむいている。
見えてくる虐待の真相――
答案用紙が如実に語る過去の出来事。
高畑が徹夜連荘で生み出した数学ちゃんからである。これは高畑が見た幻の真実。五歳児くらいの数学ちゃんはオカマに問いかける。
「X-2X-5=0って、なんだと思う。おにいちゃん?」
キラキラした瞳で男の答えを気に掛ける。男は即答で返す。
「1だよ」
「へっ……?」
1な訳がない。代入すればわかる。明らかにゼロになるわけがない。けど人間だれしも間違うことはある。数学ちゃんは首を振って気を取り直して尋ねた。試験中の高畑はそんな数学ちゃんの反応に気づかずに優しいお兄ちゃんと楽しそうに遊んでると微笑ましく見守っていた。
「じゃあ、次は8(a-b)ー(4aーb)は、なーんだ?」
「2だな」
「……」
即答で返ってきた答えに数学ちゃんは思った。aとbがこの世から消されていると。問いかけている言葉が全く届いてないことを。けど数学ちゃんはめげなかった。
「連続する4つの自然数を 小さい方から順に a b c d とし、P= a × b Q= c× d
とする。a の値が10以下のとき Q-Pの値が3の倍数となる場合は 何通りあるか考えてみようよッ!」
「1だよ」
「はぅ……」
即答の嵐。何も考えてない上に無視より酷い決めつけ。これには数学ちゃんも若干涙ぐんだ。けど負けずに声を張り上げて主張する。自分が生まれた意味なのだから。
「じゃあさ! 右の図 で 点Oは原点 点Aの座標は(6 0) であり 直線 は一次関数 y= 12 x + 1のグラフを表している。点Bは直線 上にあり 座標は ――」
「話がなげぇよ、1に決まってんだろう」
「違うよ、じゃあ次は――」
「2だよ」
「お兄ちゃん、何もわかってない!」
「1だろ。大体1か2。あとお前は喋る必要ねぇから」
「ひどい……このお兄ちゃん超ひどい!!」
仮想で五歳児の数学ちゃんは会話を拒否され泣き叫ぶ暇もなかった。何度も諦めずにトライしたが話は聞かれず即答で返ってくる1か2で終わり。会話は生まれない。
それは他の子も同様である。黒髪の気が強そうな国語ちゃんは問いかけた。
「この主人公は大変な苦労しているのに、さらにね友人に騙されちゃったんだよ。すごいかわいそーだよね。この気持ちわかるでしょう?」
「わからんが、友達でいる気もねぇし、二度と会いたくもねぇだろうな」
「えっ……五歳からの幼馴染でイジメから救ってくれた友達だよ!!」
「そんな話ねぇだろ?」
「書いてあるじゃん! そこに!!」
「聞いた話はもういい。内容がつまらねぇし、飽きたから次のこれについてだな」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
存外に扱われたことは言うまでもない。問題は問いかけてくるがこの男はどうでもいいと流す。こんな感じじゃねぇと話を一切効かずに勘で答えてくる。
眼鏡をかけた五歳児社会ちゃんも戦いを挑んだ。
「アだよ」
「何も言ってないよねッ!?」
「イだ」
「ちょっと早いよ!」
「エだな」
「何を思って――」
「たぶん、二連する頃だからエだな」
「……」
何だコイツはと社会ちゃんは侮蔑の視線を送る。リカちゃんも同様である。瞬殺される。慌ててママの元に帰るがママはニコニコしてそのオカマを見ていた。自分につけられた傷をよく見てくれていない。
最終兵器が登場する。
金髪ブロンド五歳児の外国幼女。
「ハワーユー」
「アイムファインだ、この野郎! ジャパン舐めんなッ!!」
英語ちゃんである。だが出会い頭に一発かましてくる。名前が漢字で書かれている。おまけに中指立てておととい来やがれと言わんばかりのオカマ。眉間をピクピクさせ英語ちゃんは英語でまくしたてる。
「その写真はどこで撮られたのですか。 英語で書いてみなさい。特別にヒントを上げるわ! ほにゃらら ほにゃらら the picture ほにゃらら?」
「……」
さすがに英語ちゃんには勝てないと思われた。今までの数学ちゃん達との戦闘でこの男は疲弊しているはず。だがやつは人差し指を立ててメトロノームのように振ってちっちと言わんばかり。
「
「
アメリカ生まれの英語ちゃんに衝撃である。和製英語が返ってくる。文脈と合ってすらいない。
「ピアノをひいている少女は私の姉です。(my sister, playing, the girl, is, the piano)。並び替えて答えなさい!!」
「my sister, playing, the girl, is, the piano」
「そのまんま!」
オウム返しで返ってくる回答。空白があればヤツは、
「NO!」
「なにがNOなのよ!? えぇーい、こうなったら次は長文よ!」
長文に入るなり、刹那で答える。
「アだ」
「読んでないでしょ!」
「イだ」
「アンタ人の話聞きなさいよ!」
「why?」
「何クエスチョンつけてるよ!! アンタが答えるのに問い返してきてんじゃないわよ!!」
もはや科目ちゃんたちの一人ツッコミオンパレードである。相手はボケてくる。なりふり構わずこちらを気にせずボケの嵐。ツッコミが追いつかない。頭を抱えて座り込む金髪英語ちゃんに最後にやつはいう。
「
「……」
なぜか最後の問題にだけ、Noではなく別れの挨拶が返ってきた。なす術もなく英語ちゃんは傷物にされお母さんの元へと返ったのだった。
という――
映像が高畑に見えた。子供たちが殺されていく様を。あんなに頑張って生み出し育てた我が子たちはオカマにモテ遊ばれて傷らだけの状態で帰ってきた。
そして全員が全員白目をしている。
白目の正体は――
0である。オール零点。みんな白目。
「涼宮ミサキィイイイイイイイイイイ!」
おとなしい高畑先生は怒り心頭で教室から激しい勢いで走り出す。
「美咲ちゃんの手料理最高~♪」
何も知らぬのはオカマ。人の子をボコボコに虐待したあとの飯はうまいらしい。
≪つづく≫
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