第二章
2-1. 陰謀と策略(1)
トーツは
だが、その詳細は知られていない。兵器工場のあった町を丸々一つ破壊したとか、潜入した特殊能力者が無抵抗の人々を皆殺しにしたなどと言われているが――当時を知る者たちは口を貝のように閉ざし、書物に残されることもなかった。
*
シュセン国の首都センリョウは、国内では比較的南に位置する。大陸全体から見ればちょうど中ほどかやや北に位置するものの、過ごしやすい恵まれた場所にあった。
都市は、石造りの強固な城を起点として南東へ扇状に広がる。その都市の南を、遙か北のセーウ山脈より続く大河、タット川が流れていた。センリョウはそのタット川より水を引くことで水の豊かな都市として発展した。
そんなセンリョウの象徴たる王城、サクライ城。
月はとうに頭上を過ぎ、すでに傾き始めている。夜警でもなければみな寝静まっているこの時刻にあっても活動する人々はいた。
夜空に浮かぶ三日月の光は弱々しく、城内を照らすには足りなかった。暗闇の中に点々と
その
青年はのんびりと、気ままに散策を
幸いにも青年が巡回の者と出くわすことはなく、さらにいくつかの角を曲がり、城の奥の回廊へと入り込む。
青年が不意に足を止めた。
耳をそばだて、周囲に視線を
そんな青年の表情には、何に気づいたのか、
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