文化祭一日目!
午前中の公演を終え、ボク達は教室に戻ってきた。
お客さんの入り方は疎ら。まあ、しょうが無い。一応の拍手とかそういうのは貰えたけれど、やっぱり稚拙である事は隠しようもない事実だ。
全員が全員朝から講堂に集まるというわけじゃないし、見たい物を優先する心理はそれは当然だ。
本気で悔しがっているのは瑞貴だけなのかな……?
「なんかすまん」
「ううん、気にしないよ。一応最後まで見てくれたお客さんもいたし」
というか、途中から人が増えた感じだったけど、その次にプログラムされていた有志バンドの演奏を聞きに来た人たちだろう。
口々に瑞貴を慰める言葉をみんなが掛けていたけれど、うーん?
「宣伝、しよっか」
ボクがそう言ったのに、みんなが一様に驚いて見せた。
な、何さ!! ボクがそう言うこと言うのがそんなにおかしいのか!
いや、おかしいのは分かってるけど。
ボクだって、文化祭の熱に浮かされている自信はある。
だって、折角なら色々な人に見て貰いたいじゃない。
頑張って作った奴なんだもん。
このボクのドレスだって、凄くしっかり作ってあるし。努力の結果が窺える。
肩出し、胸元の開いてるデザインはちょっとあれだけど、それだけで目を引いてる部分はあるし。正直もっとおっぱいがあれば、よかったんだけどねえ。男子達の溜息がちょっと聞こえたよ。ごめんねえ!
「燈佳は目立ってもいいのか?」
「しょうが無いよ。できれば見て欲しいんでしょ?」
ボクの問いかけにクラス内の人達が一斉に頷く。折角準備したんだし、やっぱり成果は欲しいよね。
なら、やっぱりやるとしたら宣伝だと思う。
練習風景は見られたことはあったけれど、結局疎らだし、衣装合わせしての通しの練習は完全に人を追い払ってたし。
衣装や小道具を使った所なんて、誰もみていない。やっぱり、演技だけじゃあ目を引けないんだから、出演者がどういう格好をしている買って言うのは宣伝材料ではないだろうか?
正直ボクだって、こんな肩とか胸元とか出てる服はいやだけど、頑張った証だし見て貰いたいのには違いない。
「なら、主役三人看板持って行ってきてー」
ほいっと、初雪さんから看板を手渡された。
二日目と三日目の公演時間が書かれたプラカードだ。
至極めんどくさそうに渡されたんだけど……。まあ初雪さんだし仕方ないかー。
実行員は楽できるかと思ったら、意外と忙しかったみたいだし、お疲れ様としか言いようが無い。
「まじかよー……」
瑞貴が嘆く。
これからだらっと回れると思ったら、衣装着たまま練り歩きなんて恥ずかしいしね。
しかも劇なんてボク達のクラスだけだったし。
「瑞貴、行くわよ」
「行こうよ、瑞貴」
ボクと緋翠が瑞貴を両端から引っ張る。
姫と騎士から言い寄られて羨ましいななんて野次が飛ぶけど、正直衣装着たままは恥ずかしいと思うんだ! だから道連れは一杯居た方がいい。なんなら百鬼夜行やってもいいと思ってるくらいだ!
「わかった、わかった。行くから衣装引っ張るな」
呆れた様に言う、瑞貴。
ボクと緋翠はその間で牽制しあうのだ。
それにもはや様式美みたいな感じで、和むのがボク達のクラス。
好意に気付いてないのは多分本人のみだ。ボクも緋翠も好意は飛ばしてるんだけどね。ボクの方の好意は気付いて貰えてると思うけど、緋翠の方は本人のみぞ知るってやつだ。だから、ボクからはわからない。
もしかしたら分かっているのかも知れないけれど、選ぶのは瑞貴だ。
だから、ボク達の間で、見にくい争いはしない。
ただ、少しくらいは色仕掛けをしてもいいと思ってる。それは緋翠も一緒だ。
スキンシップに託けて、体をくっつけたりとかね。お互いやってることだし。
「おー、両手に花。モテる男はつらいねー」
ニヤニヤとした笑みを浮かべて初雪さんがみんなを代表して言う。
男子からは、瀬野死ねという言葉を浴びせられて、女子からはボク達二人に無言の嫉妬が浴びせられる。
でもいいじゃん! 主役やったんだよ!? これくらいのご褒美が合っても良いでしょ!
「ただなー、あれだ。当てられるなら大きいおっぱいがよかった……」
瑞貴が、ボクと緋翠を見比べて溜息をついた。
ボクは胸元が開いてるけど、残念おっぱいで、緋翠は甲冑もどきを着てるから胸部装甲が固いのである。
「死ねばいいのに」
「ほんとにそう思う」
ボク達二人は息を合わせた。
女の子の胸を残念がったらいけないと思います。
好き好んで小さかったりするんじゃないし。くそう……本当に豊胸系頑張るぞ……!? 桜華並は無理だとしてもせめて、A一個取りたい……。ずっと言ってるけどね。でも、少しは大きくなってるんだから……! ちゃんと柔らかさもあるんだから!! ぜったい瑞貴に直で触らせてみせるんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます