第311話 吾輩『クラスタ』と『炎上』を見る。
吾輩はセバスチンに案内されながら町を転々と歩いていく。見る光景、見る光景に言葉を失くしていきそうだった。
「ほら、あれがクラスタってやつですよ」
「なんだよ、クラスタって?」
「作者戦士達が会合して、お互いに星をひねり出してるんですよ」
「作者なのに?」
「作者は読者にもなれるんです。だから星を分け与えることができるんですよ」
そこには数人の人たちが集まってしゃがみ込んで談笑していた。
「俺の星やるからさ、お前も星くれよ」
「わかった。お互い3個だぞ」
「わかってるって」
「どうも新入りっす。これからお願いします」
「おうおう、よく来たな。まぁ、手っ取り早くここにいる全員に星3個配れよ。そしたらお前にも星やるからさ」
「わかりました!すぐ出しますね!!うぅーん」
新しく来た人はしゃがみ込み、踏ん張るように力を入れた。
「やった……星出た……じゃあ、これあげますね!!」
「おう、その調子でほかのやつにも頼むわ」
「了解っす」
みんな楽しそうにしゃべっている。星をお互いに分け合いながら。
「5人いれば15個の星を獲得できるんすよ」
「……そうね。3かけ5だもんね」
「これからもっともっと増えますよ。下手したら100人とかなるかもしれませんね」
「……そしたら……星300か」
「えぇ。通常では太刀打ちできないでしょうね」
「太刀打ち?」
「忘れてもらっては困ります。これは戦争なんですよ」
「戦争?」
なんだ……戦争って。いまのところ、星を与えたりしてるだけだけど。
「やらなきゃやられる。戦争っていうのはそういうものです。お互い殺し合いの中に身を置いてるんです。気を抜こうものなら背後からBANとされますよ」
「物騒だな……天国にいけないだけじゃないのか?」
「それだけではすまないですよ。だって座席が限られてるんですから。ほら見てください、あっちの物陰に隠れた人」
「ん?」
そこには、クラスタがやり取りする様子を覗き見ている人間がいた。そして、それを写真に収め走り去っていった。
「どっかいっちゃったな……何してたんだ?あの人は?」
「あれは神に通報しに行ったんですよ」
「神に通報?」
「そうです。座席は少ないんです。怪しい動きをしてるやつがいたら、神に告げ口をするんです」
「……そうするとどうなるの?」
「されたものが罰せられたりしますね。二度と天国にいけなくなったりします」
「……天国に行く権利をはく奪されるのか」
「えぇ。だから、クラスタは見つからないようにやるんです」
「えっ?天国への権利をはく奪されるのに、そんな危ないことをやるの??」
「天国に行くためです。行く前のことなんかどうでもいいんですよ。どうせ、やらなきゃ天国に行けないんですから」
さっきから、天国天国って……何かの免罪符なのだろうか。そこに行ければどうなってもいいという意志すら感じるようにセバスチンから語られている。これをコイツは狂っていると言っているのか。その横でクラスタと呼ばれる人たちは楽しそうに会話をしていた。盗み見られてたとも知らずに。
先程から出てくるキーワードは、『星』と『天国』。
セバスチンは吾輩に楽しそうにその光景を案内してくる。彼の願いは知ってる。この世界を滅ぼしてほしい。存続するに値しない世界でしょと。まぁ、吾輩を勘違いしているのは、置いておこう。残念ながら吾輩に滅ぼす力などない。
「ささ、見てください」
「なんだあれは?」
一人の男を取り囲むように、群衆が押し寄せていた。
「お前、どうやってそんなに星を得たんだ!!」
「違う、俺は何もやってない!!」
「嘘つけ!!お前の星の量はこのカクヨムーンでは生成できない程の量だ」
「本当に俺は何もやってないんだ!!」
「きっと人モドキを使ったのね!」
「クラスタかもしれないな。すぐに通報してやれ!!」
「やめてくれー!!」
必死に願いをこう一人の男。取り囲み罵倒を浴びせる群衆達。
「これは祭りですね」
「祭り?」
「えぇ、これからあいつは火あぶりにされて炎上しますよ」
「炎上……何かいやな響きだね」
「そうですか?楽しい響きにも聞こえますよ。ニシシ、なんてったって祭りですからね」
「……あの人は悪いことしたの?」
「どうでしょうね。真実なんてどうでもいいんですよ」
「ダメだろう……真実がなきゃ……」
「まぁ、真実なんてものが楽しむことを阻害するなら、そんなものはどうでもいいんですよ。楽しければなんでもあり。さらに座席を開けさせる為に蹴落とすのもあり。それがこの狂った世界です」
「……彼は助かるのか?」
「どうでしょうね……運が良ければ助かります。大体は死にますけどね」
「えっ!?助けなきゃ!!」
「無駄ですよ……貴方一人で何かをしたところで火の始末は負えません。弱肉強食なんです。助かるかどうかは強いか弱いかです。ほっときましょう。アインツさんの力を使うほどではありません」
「……でも……」
「そこまで仰るなら、火をつける民衆の方を消すしかないですね。そうすれば彼は助かるかもしれません」
「そんなことデキるかッ!!」
「じゃあ、無理ですね……今助けても、またあそこの誰かが火をつけにきます。だから、彼自身の強さが試されるんです」
「……」
「運が良ければ助かりますよ……彼の運が強ければね」
「……くっ……ちょっと行ってくる!!」
吾輩は彼のもとに走り手を引いて連れ出した。
《つづく?》
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