第308話 吾輩『カクヨムーン』に紛れ込む
吾輩は一匹の蝙蝠を前に立ち尽くしていた。時間は夜である。書き忘れたとかではない。一発書き保存の法則のせいで書き直せないとかではない。吾輩が起きるときは夜なのである。夜なのである。夜なのであーる。
「ちょっと、お名前をもう一度いいですか?セバスチャンさん?」
「だーかーらー、違いますって!!何コウモリと間違えてるかわかりませんが、私はセバスチンです、セバスチン!!」
「……微妙に惜しいな。おしい。ほら、プリーズアフターミー。アイアムセバスチャン。レッツトライ♪」
「セバスチン!!」
「ちがーう!!ノンノン、ノンよ。全然ダメ。ネイティブな発音にすらなってないわ。呆れた。それがあなたの本気なの?チャンも発音できないなんて……子連れ狼には一生出演できないわね」
「さっきからなんなんですか、貴方!?しつこいですよ!!セバスチンです!!」
「セバスチャン・ボルト・ボルグ・オガサワラショトウ・ハヒトハモウスメナイノ・ドウナノ・オシエテヨ・コタエテヨ・バーニー36世だろ!!」
「しつこーいぃいいいいい!!セバスチンですよー!!」
「チンチンうるせぇええええええええ!!卑猥なやつだ、お前は!!」
この分からずやなコウモリめっ!どうあってもセバスチャンとは認めないらしい。何がチンだ。ふざけやがって。朕は戦争を終わらせる。朕が命ずる。どこの国のばか皇太子だ!?
「助けてあげようと思いましたが、気が変わりました。勝手に迷子で野垂れ死にしてくだい。アデュー」
「逃がすか!!」
吾輩は飛び去ろうとしたこうもりを握りしめた。
「なっ!」
「お前は唯一の手掛かりだ。逃がさん」
「脅迫だ!!誘拐事件だー!!」
「うるさい、黙れ朕カス」
「口も悪いー!」
「吾輩は元々口がわるい。あまり怒らせないことだ。永久に罵倒をし続けて眠れなくしてやろうか?」
「怖いー。この人めっちゃこわいー!」
「喋ってから死ぬか、黙ったまま死ぬか、好きに選ばせてやる」
「どっちを選んでも死んでる!?」
「欲張りな奴だ。死にたくないというのか?」
「死にたくないー。助けてー」
「あとは吾輩の眷属になって生き延びるかだ」
「眷属になります!!お願いしまっす!!」
「それじゃあ、状況を説明しろ。間違えたら殺す、言い間違えても殺す、分かりづらかったら殺す。さぁ、好きにしゃべれ」
「脅し方が半端ないー。頭おかしいー!!」
そこから、手のひらに握ったセバスチャン(偽)は町のことをしゃべり始めた。それはそれはとても長い話だったので、途中殺しそうになったが、吾輩は優しいので生かしておいてやった。
話をまとめると、
カクヨムーンという朝がこない街らしい。日の光は昇らず、月明かりだけで生活を営む。最近、平和だった町は戦争に巻き込まれたようだ。
「これで全部か?」
「全部です!!お話しできることはすべてわかりやすくしました!!」
「そうか。この町は戦争に巻き込まれているのだな」
「そうです!!」
「じゃあ質問を始めよう」
「えっ……詰問の間違いでないですか?」
「殺されるか、答えるか。好きに選べ」
「常に隙あらば殺そうとしてる!!」
「吾輩はダークサイドに落ちかけているからな。しょうがない。貴様の命など、セバスチャンではないとわかった時点から、ゴミクズも同然。無慈悲に3秒で始末できる」
「……目が本気や!?この人、目がすわっとる!!」
「街に人がいないのはどういうことだ?」
「今、コンテストという戦争の最中でして、読者戦士も作者戦士もそちらに駆り出されているのです」
「ほう。町人全員が連れ去られているのか??」
「いえ……そういうわけではないんですが、ほぼ全員に近いと思います」
「キンキンいってる金属音はなんだ?」
「それは星を作ってるんです。大量に星が必要とのことで……フクアカーン様から申せ使って全員で偽星を大量に生産しているんです」
「フクアカーン?どこかで聞いたことがあるフレーズだな」
「戦争を拡大させてる人で……勝つことだけが全てという人なんです」
「悪い奴だな」
「いえ……昔は清い心を持って町の人々に接していたのですが……隣国ナローンから帰ってきてから人が変わってしまったみたいで……」
「じゃあ、ナローンが悪いのか?」
「いえ、そういうわけでも……ナローンはカクヨムーンとは違う通貨でポイントといいうものを使ってるんです。通貨を集めると天国にいけるとかなんとか。みんなそれに各国の王様は目がくらんで、偽の通貨を大量生産しているんです」
「偽の通貨?どういうことだ??通貨は通貨だろう。金を輪転機で作るのは当たり前だ」
「輪転?ちょっとわからないですが、星とかの通貨は読者が生み出すんです。それは限りがあったりしますが、読み終えたことにより発行される通貨です」
「読み終えたこと……なんだろう……なんかわかるような、わからないような」
「とりあえず、今は戦闘中なんで、みんな必死に偽通貨を作りで天国を目指してるんです。そして、町人はいま星づくりに日々追われてるんです」
「それで……みんなどこにもいないのか」
「……そうです」
何やら戦争が起こっているようだ。世界平和を望む吾輩の前で戦争が。それにしても、とてもわかりづらい世界観だ。早く夢から目を覚ますか。吾輩は頬を抓ってみた。
「ぐぬぬ……」
「何してるんですか?」
「痛さで目を覚まそうと思って……イテテテテ……なかなか覚めないな」
「……」
「夢なのに……イテテ」
「差し出がましいようですが……痛かったら夢ではないですよ」
「えっ?」
「いや、イテテって言ってますし……」
夢じゃないの!?夢オチちゃうんかーいい!!
《つづく?》
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