第158話 吾輩『書けん』・・・・『書けん』

吾輩は目を覚ました。こうもりが話しかけてくる。

「旦那、お目覚めですか?」

「・・・来てしまったか・・・スランプが・・・」

「・・・どうしたんです?」

「書けん・・・かけないよ・・・」

「・・・困りましたね・・・」

「どうしよ・・・うぅうううう」

「ちょっと、お散歩してみたらいいんじゃないっすか?」

「うぅううう・・・そうする・・・」


吾輩はスランプに陥る・・・。

どうも・・・うまく書こうという意識が出すぎて・・・。

頭で映像を作るより・・・文字に専念しようとしてしまう・・・。

映像でなく・・・文字のイメージを・・・してしまいすぎる・・・。

文字通り・・・言葉に囚われている。


ヤル気が出るわけもなく・・・マントに袖を通した。


「はぁ~」


「めずらしいっすね。旦那が書きたがらないなんて」


「もう、吾輩の想像力は底をついたのだ・・・もう何も書けない・・・貧困。貧しくて困り果てて・・・朽ちていくんだ・・・そう、あの葉っぱが落ちたら吾輩も・・・」


「発想が貧困ですからね」


言葉が心に刺さる・・・。

セバスチャンなんて・・・嫌いよ。


吾輩は扉を開けようとするが・・・いつもより扉が重たく感じる・・・。

憂鬱というのは人の力を奪うのだろうか・・・。

非力、非才。ひ弱で卑屈。それが・・・吾輩・・・。


扉を開けて外に出ると――


外は闇に包まれ、白く妖しい光を放つ月が大きな顔をして空を占拠していた。


「吾輩の顔の面も・・・あいつぐらいデカければな・・・スーパーむ~んって感じで・・・」


「旦那、言葉にキレがないですぜ」


「月並みよ・・・吾輩なんて・・・」


「それはその通りですけど」


「・・・セバスチャン・・・」


ひどい・・・。こうもりの分際で・・・。吾輩の従者のくせに・・・。

トップブリーダーである吾輩をバカにするなんて・・・。


ムシャクシャするぜ・・・。わがままのひとつでもいってやろう・・・。


「今日は空を飛びたい」


「しょうがないですね。いいですよ。」


セバスチャンたちが吾輩のマントの下に入っていく。

吾輩はわがままをつづける。


「歩きたくない。飛んでパン屋まで連れっていって」


「旦那・・・せめて坂の下までは・・・いってくだせぇ」


「いやだーーーー!!歩きたくないーーーーーーーーーーー!!飛んで、飛んで、飛んで!!回って回って回る~うぅううう」


「・・・ったく・・・世話がやけますぜ」


カッチン・・・。

吾輩の中でそれは不協和音の様な音を出した。

なんだよ・・・世話が焼けるって・・・・。

世話してんのは吾輩じゃないか・・・。それを・・・それを・・・。

ぞんざいに扱って・・・。


「もういい・・・一人でいく。セバスチャンはお留守番でもしてろ」


「旦那?」


「もういいって言ってんだろう!!出てけ!!」


「・・・わかりやした。勝手にしてくだせぇ!!」


「勝手にするよ!!自分勝手だからな!!」


こうもり達が吾輩のマントから抜け出ていく。

もう知らん。こうもりなど・・・。


吾輩は月明かりを浴びながら、坂を歩いていく。

一人で・・・。


吾輩は歩きながら考える。

いつもそうだ・・・セバスチャンは・・・。

上から物を語って・・・。

吾輩の屋敷に勝手に住みついてるくせに・・・。

家賃も払わずに・・・。

家主に噛みつくなんて・・・。


何が月並みだ・・・。

そうだよ・・・。才能なんてかけらも持ち合わせてないんだ。

知ってるんだ。

そんなこと吾輩が一番知ってるんだ・・・。


暗い道を一人で吾輩は歩いてく。

辛い坂をひとりで・・・ただただ・・・歩いていく・・・。


一人で・・・


≪つづく?≫

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